弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第713
財産開示する方法はありますが

以前、こちらが相手に判決を取っても、
判決は相手の財産を差し押さえる権利を認めるだけなので、
相手の財産がわからないと役に立たないことになってしまう
という話をしたことがあると思います。

しかも、銀行などには、
顧客に対する守秘義務があるので、
問い合わせをしても
相手名義の預金口座の有無や残高を教えてくれはしません。

それでは、なかなか相手の財産がわからず、
差し押さえもしにくいだろうということで、
裁判所を通じて、相手の財産を明らかにする手続があります。
これが「財産開示手続」です。

債権者が判決を取っても、
なかなか債務者の財産を調査して
差し押さえをすることが難しいので、平成16年から施行されました。

この財産開示手続は、
強制執行をして回収できなかったとき、
あるいは、債権者が自分で調べた財産では
回収できる見込みがないときは、裁判所を通じて、
債務者本人に、財産内容を明らかにするよう求めることができる 
という制度です。

債務者が裁判所に出席しなかったり、
財産について虚偽の回答をしたりすると、
過料という罰金のようなものを払わなければなりません。
そこで、一応の強制力はあります。

しかし、債務者本人に回答させるわけですから、
債務者が、財産がないと回答したときに、
それが本当なのかどうなのか検証のしようがありません。

財産があると検証ができるなら、
その財産を差し押さえればよいので、
財産開示手続を利用する必要はありません。

また、手続に出頭しない場合の過料は30万円と安いので、
債権者の債権が1000万円というような多額の場合、
1000万円の財産を明らかにして取られてしまうよりは、
30万円の過料を支払った方が良いという判断も成り立ってしまいます。

このような状況で、財産開示手続は、
債務者がきちんとした人である場合は、役に立つのですが、
少しずるいような人の相手ではあまり役に立っていません。

財産開示手続を、銀行、生命保険会社、
役所などに直接照会できるようにするとか、
過料を債権金額と同額にするなどしないと、
なかなか実効性はないと思っています。


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2012年1月5日(木)

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