弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第750回
話題の生活保護問題

何千万もの年収を得ていると言われている芸能人の母親が
生活保護を受けていたということが問題とされています。

年金をかけていなかった高齢者の増加、
リーマンショック後の不況により、
生活保護を受けている人は増えているようです。

芸能人の母親のケースで問題となっているのは、
息子である芸能人が高収入だったのだから、
息子が母親を扶養することが可能で、
生活保護の受給ができないはずだったのではないかということです。
生活保護の要件は、法律上、
「厚生労働大臣の定める基準により測定した要保護者」
と書いてあるだけなので、はっきりしません。

そして、厚生労働省のホームページでは、
「親族等から援助を受けることができる場合は、
援助を受けてください。」と書かれているのみで、
明確にどういう場合が生活保護を受けられないということが
書かれていません。

それぞれの家庭の事情については、
家庭により異なることから
生活に困っている人を助けるためには、
柔軟に対応しなければならないから、
明確に要件を決めていないということなのかもしれません。
過去報道されたように生活保護を受けられないと
生活ができず死に直結してしまう人もいますからね。

しかし、国の財政がひっ迫し、
増税しないと間に合わないと言われている中で、
生活保護受給者が増加しており、
不正受給も問題となっていることを考えると、
親族の扶養義務を厳しく定めて、
「親族が扶養可能なときは生活保護を受けられない」
あるいは、
「親族が扶養可能なのに生活保護を受給したときは、
国は親族から取り立てができる」
などの制度的な解決が必要だと思います。

しかし、それでは親族に気を使って
本来生活保護を受けるべき人が生活保護を申請しなくなって、
死んでしまうかもしれないという批判も出て来るでしょう。

そうであれば、逆に、親族がお金持ちでも
親族に関係なく本人が生活に困っているという事情だけで
生活保護をもらえるようにすることも考えられます。
しかし、その場合、財源を確保するために
増税をするという方法を取るほかありません。

生活保護などの社会保障の問題は、
お金がかかる問題なので、
現在の経済情勢や国の財政状況から
解決はなかなか難しいのです。 


←前回記事へ

2012年5月31日(木)

次回記事へ→
過去記事へ
ホーム
最新記事へ