弁護士・高島秀行さんが紹介する
事前に備える賢い法律利用方法

第769回
釣りゲームで、逆転敗訴

ネットや携帯での無料ゲームサイトを運営し、
株式を上場までしているDeNAとグリー。
その両者が、ゲームを真似した真似してない
という理由で争っている裁判があります。
その対象となっているのが、
テレビのコマーシャルでもやっている釣りのゲームです。

二社の釣りのゲームには、
@水中だけ真横から描かれている
A画面の中央に三重の同心円がある
B黒い魚影や釣り糸が描かれている

という共通点があり、
これが先に釣りゲームを始めたグリーの著作権を侵害しているか
という点が争われました。

一審判決では、
「携帯向け釣りゲームは多数あったのに、水中に同心円を置き、
魚の位置で釣り糸を巻くタイミングを表現したゲームはなかった」
としてグリーの著作権を侵害したとして、
DeNAなどに対し、
2億3000万円もの賠償を命じたのです。

ところが、今回出た2審の高裁判決では、
「共通な部分はあるが表現上の創作性はない」と判断し、
その上で「具体的な表現は異なり、
全体から受ける印象も異なる」
として著作権侵害には当たらないと判断しました。

僕は両方のゲームをしたことがないので、
2つのゲームの違いについてよくわかりません。

ただ、著作権が認められるには、創作性が要求され、
単純なデザインの場合、真似したのか、
そもそも誰が描いても同じになるのか、
なかなか区別がつきません。
そこに著作権の紛争の難しさがあります。

新聞報道などからは、
「同心円を置いて
釣り糸の巻くタイミングを表現したゲームはなかった」
という点に創作性を認めた一審判決の方が
説得力があるように思えます。

しかし、著作権で争われるのは、画期的な機能ではなく、
表現方法の独自性なので、
やはり単純なデザインを使用した場合は、
著作権が認められるかはなかなか難しいところです。

最高裁まで争われるでしょうから、
どちらが勝つか注目ですね。


←前回記事へ

2012年8月14日(火)

次回記事へ→
過去記事へ
ホーム
最新記事へ