第119回
通勤時間は経済規模に比例する?

中国の住宅ローンは、
定職があればほぼ間違いなくローンが下りる様ですので、
頭金が用意出来た人から、家を買っている様な状況です。
頭金は通常、住宅価格の20%。
住宅価格が8,000元/平米×50平米=40万元(600万円)とすると、
8万元(240万円)の頭金を用意する必要があります。

夫婦2人で日系企業に勤めていて、
月給が1人3,000元(45,000円)とすると、
世帯年収はボーナスも含めれば丁度8万元ぐらいになります。
世帯年収1年分の頭金を用意する、というのは、
我々日本人の感覚から見ても、そんなに無理な事ではありません。

又、40万元の住宅価格も世帯年収の5倍ですので、
日本の感覚とほぼ同じぐらいです。
外資系の企業に勤めている人にとっては、
マイホームを手に入れるのは、夢のまた夢、
という訳ではありません。

但し、人民元の貸し出し金利は、5-6%と高いので、
ローンの返済はちょっときついかもしれません。
これが日本の高度成長期の様に、どんどんインフレになり、
借り入れ額が目減りしていくなら良いのですが、
今の所、経済成長している割には、
全くインフレになっていませんので、目減りは期待出来ません。

こうなると何としてでもマイホームを手に入れたい人は、
平米単価の安い郊外の物件を買って、
少しでも負担を軽くしようとします。
こうして北京には今までいなかった
長距離通勤族が生まれつつあります。

今まで農民しか住んでいなかった
五環路の外側などに家を買った人の中には、
マンションが運行しているシャトルバスに30分揺られて
一番近い公共バスの停留所まで送ってもらい、
そこから公共バスを乗り継いで
1時間とか1時間半掛けてやっと職場に到着する、
という様な人も出て来ました。

北京の良い所は、都心でも住宅地が多く、
通勤時間が短くて済む事だったのですが、
開発が進んで都心の地価が上がると、
従来の住宅地は取り壊され、
より多くの収入が見込めるオフィスビルや高級マンションが
建設される様になりました。
サラリーマンではそんな高級マンションには手が出ませんので、
マイホームを手に入れるとしたら、
郊外から長距離通勤をするしかありません。

私は東京生活の最大の欠点は、
長い通勤時間だと思っているのですが、
北京が経済成長をするに従って、欠点まで東京に似てきてしまう、
というのは、実に皮肉な事だと思います。


←前回記事へ 2003年8月4日(月) 次回記事へ→
過去記事へ
ホーム
最新記事へ