第172回
駅前の放置自転車を中国へ

北京の自転車生活は渋滞も無く、非常に快適ではあるのですが、
自転車ドロボーが多いのが問題です。
幸福大厦の駐輪場の問題は解決したのですが、
他の所に行く場合は、まだ問題が残ります。

通常、北京では、スーパーの前など人が集まる所には
有料の駐輪場があります。
ここには管理人がいて、
駐輪料金は1回3角(4.5円)ほどです。
しかし、有料の駐輪場がある所は少なく、
駐輪場の無い所では、道端に停めなければなりません。
道端に停める場合は、必ず道路標識や木などに
ワイヤーロックでしっかりと括りつける必要がありますが、
それでも盗まれる時は盗まれます。

中国人の友人に訊くと、
ドロボーは何でも切れる大きなはさみを持っている、とか、
どんな錠前
でも開けられる
オールマイティーの鍵を持っている、とか、
色々な事を言うのですが、実際、ドロボーが
どうやって自転車を盗んで行くのかは分かりません。

北京では自転車は300-400元(4,500-6,000円)で売られています。
月給が1,000元(15,000円)ぐらいの人にとっては
大きな買物ですし、大切な通勤手段でもあります。
一方のドロボーも盗んだ自転車を
100元(1,500円)とか200元(3,000円)で売れば、
当分は食っていけます。
何しろ、失業保険金が月210元(3,150円)という街ですから。
駅前の放置自転車が社会問題になる様な国とは、
自転車の位置付けが違うのです。

そこで誰もが思いつくのが、
日本の駅前の放置自転車をタダで仕入れて、
中国で安く売る商売です。
元手がゼロですので、
輸送費に利益を乗せても大した金額にはなりません。
私も丸紅北京支店時代に
こういう商売が出来ないか調べた事がありますが、
確か「中古の自転車には輸入許可が下りない」
という理由で断念した覚えがあります。

実際、北京の街を自転車で走っていても、
日本製の自転車を見る事はありません。
もちろん、自転車に「田中」とか「鈴木」とか、
日本人の名前が書いてある事もありません。

中国は中古品の輸入に対しては非常に厳しいです。
安価な中古品の輸入を許可する事は、
その製品を生産している自国の産業を疲弊させると共に、
外国企業の投資意欲を削ぐ事になるからです。

一方で、程度の良い日本の中古建設機械が、
建設需要に沸く中国に大量に輸出されている、
という話も聞きます。
中古品でも輸入許可が取れる製品であれば、
日本の中古品を中国に輸出する、という商売は、
いい商売になるかもしれません。


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