第253回
悪名高き「友諠商店」

中国では、会社に勤めるサラリーマンでさえ、
「プロ意識」が無い状態ですから、給料がもっと低い、
レストランのウェイトレスや、店舗の売り子などは、
もっとひどい状態です。
従業員の接客態度が悪い事が原因で、
店の業績が悪くなろうが、店が潰れようが、
給料さえきちんともらえれば、
私には関係無い、と考えている人がほとんどです。

北京で店員の態度が悪くて有名なのは「友誼商店」です。
「友誼商店」は、1960年代、
当時の周恩来首相の指示で作られた外国人向けデパートで、
中国茶、漢方薬、シルク製品など、
ありとあらゆる中国関係の土産物を売っています。

最近はずいぶん良くなっていますが、
以前は雇用を増やす為に、
必要以上にたくさん配置された店員たちが、
おしゃべりに興じていたり、
ひまわりの種を食べていたり、
編物をしていたり、
新聞を読んでいたり。

で、何か物を買おうとして声を掛けると、
「面倒くさいわねぇ」という感じで、
無言でノロノロと書いた伝票を渡され、
その伝票を持って
「収銀台(しょういんたい)」と呼ばれるレジでお金を払うと、
レジ係にはおつりを投げ返される、
という、とんでもなく不愉快な場所でした。

中国はつい最近まで
物資が足りない時代が長く続いていましたので、
これだけ物が市場にあふれるようになっても、
売り手市場の時の習慣がまだ一部で抜けきれていません。
特に、国有企業は人民に物資を「供給してあげる」
という任務を担っていましたので、
国有デパートである「友誼商店」の店員も、
「売ってやる」という態度が抜けきれないのでしょう。

昨年7月、この「友誼商店」で
社員約200人が座り込みをする、という事件が起きました。
これはSARSの影響で経営が悪化した同社が売りに出され、
買収した企業の新しい経営者が抜本的なリストラの為、
800人の社員の内、200人に自宅待機、
いわゆる「下崗(しゃーがん)」を命じた事に対する抗議です。

中国の国有企業は以前、
「鉄飯碗(てぃえふぁんわん)」と呼ばれていました。
落としても落としても割れない鉄のお碗だから、
一生食いっぱぐれない、という意味です。
「友諠商店」の社員も、そのつもりで就職しているのでしょう。
しかし、今、中国は競争社会。
どこの国有企業も、
給料だけもらって働かない人間を雇っている余裕はありません。

「友誼商店」で座り込んだ200人も、
会社に抗議する前に、
自分がそれだけの給料をもらうに値する仕事をしていたのか、
振り返って良く考えてみてほしいと思います。


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