第272回
収入と幸せ度合いは比例しない

突然ですが、
みなさんは、今、幸せですか。

別に、宗教の勧誘でも何でもないのですが、
もう一つ。
今よりもっとお金持ちになれば、
今よりもっと幸せになれると思いますか。

少なくとも、10年前、
東京で会社勤めをしていた時の私は
そう信じて疑いませんでした。

実績をあげて、早く課長になって、早く部長になって、
それに従って収入が増えれば、
豊かで幸せな生活が送れる。

その為には、今は我慢の時。
深夜まで残業して、休日出勤もして、
まずは、目の前の仕事を何とかこなさないと。

妻と娘が寝ている間に家を出て、
寝た後で家に帰ってくるので、
家族にはたまにしか会えないけれど、
これも将来の豊かで幸せな生活の為。
我慢しないと。

いつも寝不足で、疲れているので、
電車に乗る時ぐらいは座って寝ないと。
始発駅で確実に座れるのは、前から3列目までだから、
4列目より後ろになったら、次の電車を待たないと。

そんな事ばかり考えていました。

そんな私が中国に駐在となって、
それまでの価値観をガラッと変える出来事がありました。

ある日、私はコークスの船積立会いの為、
天津新港に出張に行きました。
中国企業とのミーティングが終わり、車でホテルに帰る途中、
貧民窟の前を通った時に、ある親子が目に入りました。
時間は午後5時半。
夏なのでまだ高い太陽の光の中、
仕事から早々に帰って来たおとうさんが、
家の前で3歳ぐらいの娘と一緒に、家の窓を直していました。

家や身なりから推察するに、
かなり貧乏な生活をしていると思われますが、
一緒に家の窓を直すおとうさんと娘の楽しそうな笑顔。
あの笑顔は一生忘れません。

あの家族の収入は、多分私の1/100ぐらい。
では、彼らの100倍の収入を得る私が、
彼らより100倍幸せか、というと、そんな事はない。
つまり、収入と幸せ度合いは比例しない、という事。

100倍お金持ちになれば、
100倍幸せになるか、と言えば、
そんな事はないし、
1/100しか収入がなければ、
幸せ度合いも1/100に減るかと言えば、
そんな事もない。

それどころか、貧乏人でも、
お金持ち以上に幸せな人生を送る事は十分可能だと、
今の私は思うのです。


←前回記事へ 2004年7月23日(金) 次回記事へ→
過去記事へ
ホーム
最新記事へ