第274回
「もっと太りたい」

「中国人に太った人はいない。
なぜならば、毎日ウーロン茶を飲んでいるからだ」
というのが日本では定説になっています。

実際、中国に住んでみて、中国の人たちを見ていると、
確かに、相撲取りの様に太った人はほとんどいないのですが、
お腹に贅肉を蓄えた人は日本並みにたくさんいます。

特に、北京ではまるまると太った子供をよく見かけます。
豊かになった北京の家庭では、
一人っ子に食べ物を食べさせまくるのでしょう。

元々、中国の人たちは
「太っている方が、健康的で良い」と考えています。
これは、つい最近まで、
明日食べるものにも困る生活が続いていましたので、
その時の常識の名残かと思います。
以前より豊かになったからといって、
人々の常識は一朝一夕に変わるものではないんですね。

日本の若い女性は、かなり痩せている人でも、
痩身願望が強く、更にダイエットをする人が多い様ですが、
中国の若い女性は「もっと太りたい」という人が多いです。
日本人女性の理想がモデル体型だとすれば、
中国人女性の理想は女子プロレスラー体型です。
パンチを食らっても、飛び蹴りを食らっても、
びくともしない丈夫な体が理想です。

中国では男性も痩せている人はダメです。
ある程度お腹が出ていないと、
男らしくない、と言われてしまいます。
特に、ビジネスの世界では、
痩せていてちょこまかする人は信用されません。
やはり、お腹が出ていて、
どーんと胆の据わった人でないと、
お客さんから信用されて、
大きな取引をまとめる事は出来ません。

アメリカでは「自分の体重管理も出来ない人間に、
部下の管理が出来る訳がない」という理由で、
太った人は出世出来ない、と言われていますが、
中国では、むしろ、太っている人の方が、
お客さんから信用されて、出世が早いかもしれません。

こんな常識の国ですので、
ダイエットをしている人はほとんど見かけません。
過去一時期、「減肥茶」や痩せる薬が流行った事もありましたが、
今では、話題にも上りません。
今後、豊かになった中国では、
肥満体型の人がどんどん増えていくと思いますが、
人々の常識が変わって、ダイエットが流行するまでには、
まだまだかなりの時間がかかるのではないでしょうか。


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