第293回
主観的な価値観に基づいた値段

骨董品に限らず、全てのものの価値は
その人の主観的な価値観によって
変わってくるのではないかと思います。
そういう意味では、日本の様な正札販売より、
交渉によって値段が決まる、という販売方式の方が、
双方にとって合理的なのかもしれません。

交渉によって値段が決まるならば、
売り手にとっては、
そのものの価値を高く評価してくれる人には、
正札で表示するより高く売れるかもしれませんし、
買い手にとっても、
正札の値段ほどの価値は感じないが、
この値段なら買いたい、
と思うものを手に入れるチャンスも生まれます。

中国も日本の様に正札販売が浸透しつつありますが、
自由市場の様な場所では、
ものの値段は最初から決まっておらず、
交渉によって折り合った値段で販売されています。

よく日本から来た人が中国の自由市場に行って
「外国人だと思って、
とんでもない金額を吹っかけて来やがった!」
と憤慨している事があります。
交渉していくと、一番最初の言い値の、
1/3とか、1/5の値段になってしまうからです。

正札販売に慣れている日本人の目から見たら、
一番最初の言い値が正札みたいなものですから、
「そんな値段で買ってしまったら、
大損する所だった」となるのですが、
売り手は買い手がそのものの価値を
どの程度評価しているか分からない状態ですので、
とりあえず機会利益を失わない様に
高い値段から交渉を始めるのは、当然の事なのです。

買い手はその金額に値する価値があると思えば、
その金額で買えば良いし、
その金額に値する価値がないと思えば、
「その金額では買えません」と冷静に対応すれば済む事です。

私は日本にいる時には、
ほとんどのものが正札販売ですので、
こんな事を考える事もなかったのですが、
中国に来て自由市場での交渉にもまれた末、
他の人が何と言おうと、
ものは自分の主観的な価値観に基づいた値段で買うべきだ、
と思う様になりました。


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