第356回
懲役15年という、余りに大きな代償

地方では「共産党幹部だったら、何をやっても許される」
という様な風潮がいまだに残っている、という事実は、
最近起きた事件からも読み取れます。

先日、広西チワン族自治区桂林市中級人民法院は、
同市の政治協商会議(政協)委員である
王民学被告に対し、
密航組織罪で懲役15年の判決を下しました。

市の政協委員とは、
日本で言う市議会議員の様な立場であり、
当然、市の共産党幹部です。

桂林市の囲碁院院長も兼務していた王被告は、
日本の社団法人・日中文化協会に対し、
囲碁大会の為に選手団を日本に派遣したい、と
選手団の受け入れを要請。
同協会の同意を得た後、
共犯者と共に
1人当たり18万元(270万円)の料金で、
日本への密航希望者を集めました。

王被告は日本政府から迅速にビザを取得するため、
密航希望者の職業や囲碁の段位などを虚偽報告しました。
そして、ビザの取れた14人を連れて大阪に渡航、
大阪到着の夜に14人は失踪、
王被告はその後、1人桂林に戻りました。

日中文化協会は14人の失踪情報を日本の外務省に報告、
中国の外交部経由で報告を受けた中国政府は
公安当局に徹底調査を指示、
王被告は共犯者と共に、あっけなく逮捕された、
というのが事件の顛末です。

王被告がやった事は、
黒社会(へいしゃーほい、暴力団)の蛇頭と同じです。
これだけ大規模な密航を手配すれば、
大騒ぎになって公安の捜査が入り、
捕まったらかなり重い罪に問われる、
というのはちょっと考えれば分かる事です。
それにも関わらず、
王被告は海外に逃亡するでもなく、
桂林に帰って公職に復帰していました。

これは、王被告に
「共産党幹部だったら、何をやっても許される」
という意識があったのではないかと思われます。
「権力の中枢にいれば、この程度の事は、
いくらでも握りつぶせる」と考えた為、
逃げることもせず、
のうのうと公職に復帰していたのではないでしょうか。

中国共産党は王被告が考えているより、
ずっと速く変わらなければいけないぐらい、
追い詰められているのです。
いつまでも
「共産党幹部だったら、何をやっても許される」
なんて考えていたら、
中国共産党は怒った民衆に
石もて中国から追われてしまうのです。

王被告は、共産党幹部でありながら、
そんな事さえも知らなかったが為に、
懲役15年という、
余りに大きな代償を払う事になりました。


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