第358回
「共通の敵」

民衆の不満を和らげる為に、
中国共産党は必死です。

各地で頻発している暴動が、
全国的なムーブメントにでもなってしまったら、
それこそ、共産党一党独裁体制の崩壊にも
つながりかねません。

共産党は農民と工場労働者の
代表によって作られた党なのに、
農民と工場労働者の暴動で
政権が転覆してしまっては、
それこそしゃれになりません。
世界中の笑い者になってしまいます。

民衆の不満を和らげる最高の良薬は、
民衆に「豊かになってきている」という
実感をしてもらう事です。
生活がどんどん豊かになっている時に、
体制の転覆を企てようと考える人はいません。
そうした意味で、
今後の中国政府の経済運営の成否は、
現体制の命運を握る、
と言っても過言ではないのです。

一方で、「共通の敵」を作るというのも、
民衆の不満をそらす良い方法です。
「共通の敵」がいれば、
政府を攻撃していた民衆も
「内輪もめしている場合ではない」と考え、
政府と一致団結して
「共通の敵」を攻撃し始めます。

中国政府にとって、
最も「共通の敵」に仕立て易いのは、
やはり戦争で中国を侵略した日本です。
中国ではとりあえず「反日」を叫んでおけば、
誰からも批判される事はありません。

こうして考えると、
昨年、サッカーのアジアカップで
反日を叫んで暴れる民衆を、
中国政府が厳しく取り締まれなかったのも、
靖国問題や尖閣諸島問題で
中国政府が1歩も引けないのも、
とても良く理解出来ます。

厳しく取り締まったり、譲歩したりする事は、
敵側に立ってしまう事を意味します。
中国政府としては
「やらない」のではなく、「出来ない」のです。

これは中国に限らず、どこの国でも同じです。
アメリカも「テロリスト」という、
誰も異議を唱えられない悪者を
「共通の敵」に仕立てて、
国民の政府に対する求心力を高めようとしています。

世界の人々が仲良く共存する様になるのは、
得体の知れない宇宙人が地球に攻めてきて、
全人類が協力して
「共通の敵」である宇宙人を攻撃する時まで、
待たなければいけないのかもしれません。


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