第360回
「錯批一人、誤増三億」

中国の人口が先月6日、13億人を超えました。
どうやって計算したのか分かりませんが、
同日、北京で生まれた赤ちゃんが、
13億人目の中国国民と認定され、
テレビニュースなどでも大々的に報道されていました。

赤ちゃんが生まれる、という事は、
非常にめでたい事ではあるのですが、
1979年の「一人っ子政策」導入から
四半世紀を経た現在でも、
未だに人口の増加が止まらない中国の心境は複雑です。

1949年の中華人民共和国建国時、
中国の人口は5.4億人でした。
その後、毛主席が「人口資本説」を打ち出し、
多産を奨励したため、人口は爆発的に増加、
1974年には中国の人口は9億人を超えてしまいました。

毛主席の「人口資本説」とは、
「人口が多い、という事は、
付加価値を生み出す資本が多い、という事なので、
人口が多い方が国が富む」という考え方です。

毛主席曰く、
「人間はものを食べる口は一つだが、働く手は二本ある」。
要は、国民1人1人が、
自分が食べる分以上の付加価値を生み出していけば、
国はどんどん富んでいくはずだから、
人口は多ければ多いほど良い、という事です。

この「人口資本説」に真っ向から異議を唱えたのが、
経済学者で当時北京大学の学長であった馬寅初です。
馬寅初は1957年、人民日報で「新人口論」を発表、
過剰な人口の増加は、経済発展の妨げになるので、
人口を抑制をすべし、との主張をしました。

しかし、これが毛主席の逆鱗に触れ、馬寅初は失脚、
それから20年以上後の1979年に
「新人口論」の正しさが証明され、
馬寅初が名誉回復した際には、
「錯批一人、誤増三億
(たった1人を誤って批判したが為に、
3億もの人口を増やしてしまった)」と言われました。

もしかすると「錯批一人、誤増三億」は、
悪名高き「文化大革命」よりも、
更に重大な毛主席の失政なのかもしれません。


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