第510回
自由はないけど、国民が幸せに暮らせる国家

私は、実のところ、中国共産党が
中国歴代王朝のように独裁政治を続けるのは、
悪いことだとは思っていません。

私は民主主義国家・日本で生まれ育ちましたので、
中国に来た当初は、
中国も早く民主化するべきだと思っていました。
しかし、中国に住んで、
いろいろと事情がわかってくるうちに、
「民主主義」という政治体制は、必ずしも万能ではない、
ということがわかってきました。

今では、むしろ、中国共産党が一党独裁を続けた方が、
中国人民の幸せのためである、とさえ思っています。

今の中国にとっては、自由より何より、
いかに早く、全ての国民がお腹いっぱいで
幸せに暮らせる状況を作り出すか、の方が、
はるかに重要な課題です。
そのためには、コストが高く、
手続に時間がかかる民主主義よりも、
国民の権利をある程度制限した、
独裁政権の方が適しているのです。

立ち退き交渉が難航して、
何十年経っても環状道路が輪っかにならない国と、
立ち退き交渉がないので、2-3年で、
きれいな輪っかの環状道路ができる国。
どちらの国の経済効率が高いかは明白です。

歴史にifはない、というのは承知の上ですが、
もし、1989年の天安門事件で、
中国共産党が学生たちの民主化要求をのんでいたら、
中国の今日の高度経済成長はなかった、
と私は思っています。

民主化するのは、中国が世界一の経済大国になって、
全ての国民がお腹いっぱい
食べられるようになってからで良いです。

アメリカは「自由がなければ、国民は幸せになれない」
と言います。
そして、独裁国家を片っ端から叩き潰して、
世界中を民主主義にする、と言います。

しかし、今の中国を見ていると、
アメリカの主張は、必ずしも正しくないような気がしてきます。

自由はないけど、国民が幸せに暮らせる国家は実現できるのか。
中国共産党の壮大な実験は、今後も続いていきます。


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2006年1月25日(水)

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