第524回
「コツコツやる奴ぁゴクローサン」

私は丸紅の本社で働いていた時、
月に100時間前後、残業をしていました。
平日は毎日、終電近くまで残業。
土日もどちらか1日は出勤、という感じでした。

20代でまだまだ元気な頃とは言え、
そんな生活がずっと続くと、
万年寝不足、体調不良。

体的にはかなりしんどいのですが、
これを人に話すと、「大変ですねぇ」とか、
「お体に気を付けてください」とか、
そういったやさしい言葉で励ましてもらえるため、
「寝不足、体調不良は、バリバリ働く、
超多忙な商社マンの勲章」
などという大きな勘違いをして、
商社やマスコミ業界によくいる、
いわゆるいやみな
「寝不足自慢」、「体調不良自慢」の人間に
なっていったのでした。

しかし、この価値観、
中国に駐在すると同時に、
ガラガラと音を立てて崩れてしまいました。

中国では「残業するのは就業時間中に
仕事を終わらせることのできない能力のない人間」、
「自分の体調でさえ自分で管理することができないのは
頭の悪い人間」というのが常識だったのです。
こんな世界では、死ぬほど働いて、体調を崩しても、
自慢どころか、バカ呼ばわりされるだけです。

このため、中国では、
未曾有の高度経済成長を続けているにも関わらず、
残業をする人が非常に少ないように思います。
日本の高度経済成長期のような、昼夜を問わず、
馬車馬のようにモーレツに働くサラリーマンは、
あまりみかけません。

もちろん、就業時間中はみなさん、
一生懸命働いているのですが、
定時になると、
仕事を切り上げてさっさと帰り、
家でゆっくり休みます。

中国には日本のような、労働の美徳や、
努力を重んじる風潮はありません。
全ては結果です。
その辺、ヒジョーにドライで合理的です。

同じ金額を稼ぐのならば、モーレツに残業をしたり、
コツコツと努力して業績を積み上げるよりも、
人脈を使ったり、儲かる仕組みを作ることで
ドカンと儲ける方が、スマートなのです。

「おれはこの世で一番、無責任と言われた男、
ガキの頃から調子よく、楽して儲けるスタイル」。
「人生で大事なことは、タイミングにC調に無責任、
とかくこの世は無責任、コツコツやる奴ぁゴクローサン」。

映画「無責任シリーズ」で、
植木等が演じる「無責任男」は、
中国のサラリーマンにとっては理想の姿なのです。


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2006年2月27日(月)

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