第526回
中国では買えない「Made in China」

うちの長女は今年、
北京日本人学校の小学校を卒業します。

となると、子供が小学校の卒業式に
着ていく服が必要となるわけですが、
北京ではどこのデパートを探しても、
子供が卒業式に着ていけるような
フォーマルでかわいい服が見つかりません。

私、個人的には「一生に一度しか着ない服に
気合を入れても仕方がない」と思いますので、
テキトーに間に合わせればよいと思っていたのですが、
女性陣は「一生に一度しか着ない服「だからこそ」
気合を入れなければならない」と考えるようで、
結局、妻の実家のおじいちゃん、おばあちゃんにお願いして、
日本でフォーマルでかわいい服を買ってもらって、
北京に郵送してもらいました。

日本から送られてきた服は、
やはり、中国の服とは明らかに違って、
子供服とは言え、とてもシャレたデザインでした。
縫製もしっかりしており、
「さすが、日本の服は違うな」と思ったのですが、
よく見ると、タグには「Made in China」の文字。

この服は中国で生産されて、日本に船積され、
日本のデパートで買われて、また中国に郵送されたのです。

こんなことなら、中国で直接売ってくれれば、
無駄な手間をかける必要もなかったですし、
日本往復の輸送コストもかからなかったのですが、
中国ではどこを探しても、
こんなシャレたデザインで、
品質がよい服は売っていません。

以前、こんな笑い話を聞いたことがあります。

コーヒー好きの日本人が、
おいしいコーヒーを飲むために、
コーヒーの本場・ブラジルに旅行して、
楽しみにしていたコーヒーを飲んだところ、
これが大変まずい。

「ブラジルはコーヒーの本場なのに、
なんでこんなまずいコーヒーしかないんだ!」
と文句を言ったところ、店主曰く
「1級、2級のコーヒー豆は、
全部日本に輸出されちゃうんで、
ブラジル国内に流通しているのは
3級以下のコーヒー豆しかないんですよ」。
つまり、世界で一番おいしいコーヒーが飲めるのは、
ほかでもない日本だった、というわけです。

今、ブラジルのコーヒーと同じことが、
中国の服でも起きています。

そう言われてみれば、北京の街中で
「外貿(わいまお、外国貿易)」という看板を
誇らしげに掲げている洋服屋さんを
ときどき見かけますが、これは
「デザインも品質もよい輸出用の服を売ってますよ」
という意味なんですね。

世界の工場と呼ばれ、
世界一品質にうるさい日本人でさえも
満足させられるような
高度な生産技術を身に付けた中国。

しかし、中国の人たちが、
この高度な生産技術で作られた製品を、
自分で買えるぐらいの収入を得られるようになるまでには、
もう少し時間がかかるのかもしれません。


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2006年3月3日(金)

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