第555回
文化大革命の後遺症

最近、中国人の企業経営者の方に
お会いする機会が何度かありました。

彼らの共通点は、
かなり大きな会社を経営しているにもかかわらず、
みなさん40歳代前半と非常に歳が若いことです。
以前に比べれば若返っているとはいえ、
まだまだ50代、60代の経営者が多い
日本企業と比べると、明らかに若いです。

私がお会いしたのはみんな私営企業の創業社長ですが、
国有企業の社長に関しても同じことが言えます。
今や、中国の国有企業は、
年寄りの共産党幹部が赤字を垂れ流しながら
私腹を肥やすための場所から、
若くて頭のよい経営者が利益を求めて
科学的な経営を行う場所に変わりつつあるのです。

中国の企業経営者は、
なぜこんなに若いのでしょうか。
それは、もう30年も前に終わった
文化大革命の後遺症、と言われています。

1966年から約10年間にわたって、
中国全土を大混乱に陥れたプロレタリア文化大革命。
農民や工場労働者などのプロレタリア階級による独裁、
という共産党の基本理念に戻るために、
高学歴者や文化人を
片っ端からつるし上げた革命ですので、
文化大革命期間中は当然、
まともな教育がなされませんでした。

今、40代後半から50代前半の人は
1951〜1961年生まれ。
本来ならば一番勉強しなければいけない時期に、
文化大革命のせいで、
まともな教育を受けることができなかったため、
この世代には企業の経営ができるような
優秀な人材がいない、と言われています。

例えば、一昨年、IBMのパソコン部門を、
17.5億ドル(約2,000億円)で買収して、
一躍、世界にその名を知られるようになった、
パソコンメーカーの聯想(りぇんしゃん、レノボ、0992)。
同社の楊元慶(やんゆぇんちん)総裁は
1964年生まれの41歳です。

楊氏は5年前、36歳の若さで、
創業者の柳伝志(りゅうちょわんじー)氏から
総裁の座を託されましたが、
当時、柳氏は50代半ば。
パソコン業界という、比較的若い人材の
専門知識を必要とする業界特性はあるかもしれませんが、
それでも、この思い切った若返りを見ると、
いかにその間の年代に、
優秀な人材がいないかがわかります。

今、40代前半に差し掛かっている人材は
文革後の第一世代です。
中国ではその後、
大学進学率がどんどん上がっていますので、
今後、第二世代、第三世代と、
更に多くの若い経営者人材が
頭角を現してくるのではないでしょうか。


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2006年5月10日(水)

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