第556回
「中国ビジネスコンサルタント」は役に立つのか?

従来、日本企業が中国でビジネスをするに当たって、
最も重要なものは情報と人脈でした。

あてにならない統計の数字、
あってないような法律、
中国人の不可解な思考回路。
そんな状況下で、中国企業と取引したり、
中国に工場を建てたりするには、
確かな情報と頼れる人脈が不可欠でした。

このため、日本では巷に
「中国ビジネスコンサルタント」
という肩書きの人があふれ、
彼らはその情報の確かさと
豊富な人脈を競い合ったのでした。

しかし、よく考えてみれば
「中国ビジネスコンサルタント」
という人はたくさんいますが、
「アメリカビジネスコンサルタント」とか、
「インドビジネスコンサルタント」という人は
あまり聞きません。

これは、いかに中国が不可解で
日本の常識が通じない、
すなわち、ビジネスをするには
あまり適さない場所であった、
ということを示すとともに、
そうしたハンデを乗り越えるために
コンサルタントに高いコンサルタントフィーを払っても
余りあるほどのメリット、
すなわち、日本の20分の1と言われる
安い労働力が豊富にあった、
ということを表しています。

しかし、現在、北京、上海などの大都市を中心に、
中国ビジネスの世界は、
何をするのでも、いちいち袖の下を渡さないと
話が前に進まないような前近代的な世界から、
マーケットの需給状況に基づいた条件で締結された契約書が
淡々と履行される合理的な世界へと変わりつつあります。

また、高度経済成長により為替は元高の方向に、
労働者の賃金は上昇の方向に進みつつあり、
安くて豊富な労働力を頼りに、
中国の工場で作った製品を日本や第三国に輸出したり、
中国企業が作った安い製品を日本に持って行って売ったり、
というビジネスモデルが徐々に機能しなくなりつつあります。

急速に合理的になりつつあり、
また、輸出型から内需型への
転換を迫られている中国ビジネス。

そんな中で、情報と人脈を「売り」にしてきた
従来型の「中国ビジネスコンサルタント」たちは、
どんどん役に立たなくなっていくのではないでしょうか。


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2006年5月12日(金)

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