第567回
「自分は中国で何ができるのか?」

私は中国で起業をするに当たって、毎日毎日、
「自分は中国で何ができるのか?」ということについて、
文字通り、頭がオーバーヒートするぐらい考えました。
人間、脳を酷使しすぎると、
ホントに頭が熱くなるんですね。
この時初めて知りました。

私は丸紅に入社して以来、12年間、
ずーっと石炭貿易一筋で仕事をしてきました。
この経歴から考えると、
石炭貿易の会社を興すのが順当なのですが、
石炭貿易は、ヤン州煤業(H株、1171)や
神華能源(H株、1088)などの大手石炭会社が、
新日本製鐵や東京電力など、これまた大手のバイヤーと、
数十億円単位の契約を交わす世界。
とてもではないですが、
個人企業がしゃしゃり出ていって
相手にされるような状況ではありません。

これが同じ丸紅でも、
食品部門やアパレル部門など、
いわゆる川下の商品を扱う部署に配属されていれば、
その業界の中でニッチな市場を見つけて
起業することが可能だったかもしれないのですが、
配属される部署は自分で決めることはできませんので、
こればっかりは仕方がありません。

大学を卒業した時点で、
将来、食品業界やアパレル業界で起業したい、
という明確な目標があれば、
どの部門に配属されるかわからない
総合商社など行かずに、
はなっから食品会社やアパレル会社に入社して、
業界の仕組みを学んだり、
業界の人脈を広げたりすることもできました。
しかし、「将来、海外で仕事をしたい」という
漠然とした夢しか持っていなかった私は、
「海外駐在のチャンスが一番多そう」という
いかにも単純な理由で、
総合商社を就職先に選んだのでした。

ま、今から振り返って考えてみれば、
「将来、海外で仕事をしたい」という夢は、
結果的に、形はともあれ、かなっていますので、
それはそれでよかったのですが...。

さて、12年間石炭一筋、石炭バカの私から、
石炭を取ってしまうと、
後に残るのは「中国」しかありません。

丸紅の北京支店で5年間、
駐在員として働いた経験を生かして
起業することはできないか。
しかし、資金は、家も買わずに何とか貯めた、
虎の子の2,000万円しかないので、
多額の初期投資が必要な事業は立ち上げられない。
運転資金が乏しい零細企業は、
一度不払いをかまされるだけで、
おカネが回らなくなって、
倒産してしまう可能性が高いので、
スタート時点でのお客さんは中国企業ではなく、
きちんとおカネを払ってくれる日本企業にしたい、
などなど。

そんなことをいろいろ考えに考え抜いて出した結論が、
中国に事務所を持たない日本企業の中国業務を代行する
「中国駐在員事務所代行サービス」だったのです。


←前回記事へ

2006年6月7日(水)

次回記事へ→
過去記事へ
ホーム
最新記事へ