第580回
「漢奸」と「非国民」

日中国交正常化後最悪と言われる
現在の日中関係。
靖国問題だけでなく、尖閣諸島問題、
東シナ海ガス田問題、教科書問題などなど、
日中両国の間には多くの未解決の問題が
横たわっています。

これが政府間の問題に止まっていれば
まだ良いのですが、
私が現在の状況が深刻だと思うのは、
数々の問題の存在により
両国民の感情が悪化しつつあることです。
両国政府の関係が悪い状態が長引けば長引くほど、
中国には反日の人たちが、
日本には嫌中の人たちが増えていきます。

「日中友好」を主張するより、
「反日・嫌中」を主張するほうが、
舌鋒が鋭くなりますし、
より過激な主張をしたほうが、
大衆の支持も得やすくなります。

学校のいじめではないですが、
「日中友好」などと言っていると、
攻撃の矛先が自分に向きかねませんので、
「反日・嫌中」を唱えていたほうが、
自分の身のため、ということもあるのでしょう。

おかげで、中国に住む日本人であり
「日中友好論者」である私は、
最近、ずいぶん嫌な思いをするようになってきました。

私が日本人だという理由だけで
毛嫌いをする中国人の人から、
「小日本(しゃおりーべん、日本人に対する蔑称)」
などと言われるのは、
まだ私自身に対してのことなので
我慢もできるのですが、
一緒にいる中国人の友人が
「漢奸(はんじぇん)」と呼ばれるのは
どうにも我慢ができません。

「漢奸」とは、
日本が中国東北部を占領していたときに、
日本人に協力した中国人に対する蔑称で、
売国奴という意味です。
こんなほこりをかぶった昔の言葉が、
亡霊のように復活してくれば、
中国では日系企業で働く人も、
日本語を勉強する人もいなくなってしまいます。

一方で、私が「足を踏まれたほうは、
いつまでもその痛みを忘れないのだから、
踏んだほうは、もうちょっと気を使ったほうが
良いのではないか」というようなことを言うと、
こんどは日本人の人たちから、
「あなたには愛国心というものがないんですか!」
と言われたり、ひどいときには
「非国民」呼ばわりされたりします。

なにを言われようとも、私は、「日中友好」が
将来的な日中両国の繁栄、ひいては、
日中両国民の幸せにつながると信じています。

「日中友好」を主張しても、
「漢奸」とか、「非国民」などと
言われない世の中が早く来ることを、
心から祈っています。


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2006年7月7日(金)

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