第582回
石炭で走る車

中国にとってエネルギー政策は、
国家の安定という観点から見て、
非常に重要な役割を担っています。
エネルギー不足で経済成長が鈍化
→企業の業績が悪化し、失業者が増加
→失業者が各地で暴動を始め、それが全国に波及
→共産党一党独裁政権の崩壊。
中国政府としては、こうしたシナリオは
絶対に避けなければなりません。

このため、中国は1993年に
石油の純輸入国に転落して以来、
輸出で稼いだ外貨を、
せっせと海外の石油権益に換えてきました。
最近では、戦略的な石油備蓄基地を
建設したりもしています。

発電については、
石油でも石炭でもできますので、
石油が足りなければ、
国内で豊富に産出される石炭で
代替することができるのですが、
これからどんどん増えることが
予想されている自動車は、
現状、石油がなければ走りません。

エネルギー安全保障の面から見れば、
中国は国内でいくらでも調達できる
石炭で走る車を作ればよいのですが、
かと言って、石炭を燃料とした
蒸気自動車など発売しようものなら
「中国は200年前の
ジェームス・ワットの時代に戻ったのか」
と諸外国のみなさんに笑われてしまいます。

となると、総需要量の43%、
年間1億2,000万トンの石油を輸入する、
世界第二位の石油消費国・中国の石油消費量は、
今度、更に増えていくことが予想されます。

そんなことを考えて
中国石油天然気(0857)の株を
たくさん買ったのですが、
最近のニュースによれば、
中国石油天然気を始めとする
中国の石油会社が、
マイカー増加の恩恵を
独占できない可能性も出てきました。

昨今の原油価格の高止まりの影響で、
今までコストが高く採算に乗らなかった
石炭液化プロジェクトが、
中国でいくつも立ち上がりつつあるのです。


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2006年7月12日(水)

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