第609回
権限は大きいが、給料は安い

中国ではなぜ、こんなにも
「わいろ」が蔓延してしまっているのでしょう。

最大の理由は、政府機関の職員や国有企業の経営者は、
大きな権限が与えられているわりには、
給料が安い、ということにあると思います。

以前、私が丸紅の北京支店で働いているときに、
地方の大規模国有炭鉱に出張したのですが、
宴会の席で給料の話になり、
その国有炭鉱の総経理(社長)の給料を訊いたところ、
月3,000元(45,000円)とのことでした。

その国有炭鉱は規模が大きく、
総経理は共産党組織の中でも比較的地位が高いのですが、
給料は月3,000元。
当社の新入社員の半分の金額です。

中国共産党は「為人民服務(うぇいれんみんふーうー)」、
人民に奉仕するために仕事をしていますので、
いくら大規模国有炭鉱の総経理で共産党の幹部でも、
人民がそれを聞いて
「俺たちが食うや食わずなのに、なんでお前らだけ!」
と憤りを覚えるような、
べらぼーに高い給料を受け取ることはできないのです。

しかし、共産党員も人の子。
「長年の苦労が報われて、やっとこ総経理になったのに、
給料が3,000元でこれ以上上がらないなんて
何のために生きているのかわからないじゃないか。
持っている権限を利用して、豊かな生活を送るのは、
私に与えられた当然の権利だ!」と考える人が出てきても、
全く不思議ではありません。

日本の官僚やサラリーマンは、
「わいろ」の授受が発覚した場合、
それまで苦労して築いてきた地位や収入など
全てを失ってしまう、という
非常に大きな代償を
支払わなければならない可能性があるため、
一線を踏み越える人が少ない、
ということもあるかと思います。

しかし、中国の場合、
元々の給料がたいした額ではないので、
「バレなきゃ一攫千金!」
という悪魔のささやきに
負けてしまう人が多いのではないでしょうか。

中国の「わいろ」を撲滅するには、
取り締まりを厳しくするのと同時に、
公務員や国有企業経営者の給料を
「収賄がバレて懲戒免職になって、
この収入を失ってしまうのはあまりにも惜しい」
と思うぐらいのレベルまで上げてあげる必要が
あるのかもしれません。


←前回記事へ

2006年9月13日(水)

次回記事へ→
過去記事へ
ホーム
最新記事へ