第610回
北京のマンションバブル

今、北京では
「こんなにいっぱい建てて、住む人がいるのか?」
と、他人事ながら心配になってしまうほど、
たくさんのマンションが建設されています。

しかし、こうしたマンションは
私の心配をよそに売れ続け、
北京のマンション価格は上がり続けています。

特に、中国一の商売上手である温州商人や、
石炭相場の高騰で大金を手にした
山西省の炭鉱オーナーの買い方は豪快で、
新築マンションの前に立って
「ここからここまで全部!即金で!」というような、
まとめ買いをするそうです。

そうしたマンションのまとめ買いをする
成金の人たちの目的は、ズバリ値上がりです。
「誰かに貸して汚く使われて、
資産価値が下がるぐらいなら、
チンケな家賃収入などいらん!」ということで、
空室のまま置いておく人も多いと聞きます。

このため、北京の郊外には、
建設されてかなりの年月が経つのに、
夜になっても数えるぐらいしか灯りがついていない、
ゴーストタウンのようなマンション群もあります。
中国の成金の人たちにとって、
マンションは既に人が住むところではなく、
値上がり待ちの現物資産でしかないのです。

そして、成金の人たちは、
どんどん上がっていく相場の中で、
ババ抜きの「ババ」を引かないように、
「売り」のタイミングを虎視眈々と狙っています。
実需が伴っていない上げ相場ですので、
何かささいなきっかけで相場が下がって、
まとめ買いをした成金の人たちが売り浴びせに入れば、
北京のマンション価格は大暴落する可能性もあります。

最近は、来るべき人民元の大幅切り上げに備えて、
人民元の資産を持つべく、中国のマンションに
投資する日本人が増えていると聞きますが、
私はこんな海千山千の猛者たちと戦って、
「ババ」を引かずに逃げ切る自信がありません。
多分、人民元の大幅切り上げより先に、
北京のマンションバブル崩壊に遭遇し、
逃げ遅れてマンションを
塩漬け状態にしてしまうような気がします。

中国は破竹の高度経済成長を続けていますが、
消費者物価は落ち着いており、
バブル経済という感じはしません。
しかし、ことマンション投資に関しては、
超バブリーな状態が続いているのです。


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2006年9月15日(金)

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