第622回
早すぎる起業

中国起業はタイミングが非常に重要だと思います。
遅すぎるのはもちろんいけないですが、
早すぎてもいけません。

私たち日本人は、
既に40年前に高度経済成長を経験していますので、
マイホームやマイカーを手に入れた人たちが、
次に何を欲するかを知っています。
また、高度経済成長をしている、といっても、
中国のマーケットはまだまだ未成熟ですので、
日本にはあるが中国にはないモノやサービス、
というのもたくさんあります。

日本人が中国で起業をするに当たっては、
その辺のギャップを十分に生かして、
マーケットに対して時代の先を行くような提案を
していくべきなのですが、
あまりに先のモノやサービスを提案しても、
今度はマーケットが着いてこられない、
ということもあります。

例えば、うちの近所にあるメイプルモーターシネマ。
車に乗ったまま映画が見られる、
というスタイルの映画館なのですが、
私が北京に来た10年前には既にあったように思います。

多分、カナダ辺りから帰ってきた中国人の人が、
中国が将来、自動車社会になることを見込んで
作ったのだと思いますが、
10年前の北京で車に乗っていたのは、
タクシーの運転手か企業のお抱え運転手ぐらい。
マイカーにガールフレンドを乗せて、
モーターシネマを見に行くような人は
ほとんどいませんでした。
このため、メイプルモーターシネマは
いつも閑古鳥が鳴いており、
私はその前を通る度に
「いつ潰れるんだろう」と思って見ていました。

しかし、3-4年前から始まった北京のマイカーブームで、
メイプルモーターシネマは息を吹き返しました。
具体的にお客さんが
どのぐらい入っているのかはわかりませんが、
門構えが立派になったり、
上映中の映画を紹介するパネルが
豪華になったりしたのを見ると、
おカネが回り始めていることが見て取れます。

会社経営には固定費がかかります。
この固定費を負担しきれなくなったときに、
会社は潰れます。
メープルモーターシネマは、早すぎた起業にも関わらず、
何とか資金を持たせて不遇の時期を乗り切りましたが、
資金力のない個人企業では、
早すぎる起業は命取りになります。

既に過当競争になっており、
値下げの消耗戦を繰り広げているような業界に
参入するのは論外ですが、
時代の先をいくモノやサービスを提案する場合も
半歩先ぐらいにしておかないと、
時代が追いつく前に倒産、
なんていうことにもなりかねないのです。


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2006年10月13日(金)

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