第625回
日本の中国語翻訳会社が潰れないワケ

何社かの日本企業から
翻訳の仕事を頂いた当社ですが、
いざ本格的に始めてみると、
委託先である地元翻訳会社の翻訳の品質が
軒並み崩れ始めました。

各社とも400字前後のテスト翻訳の時には
そこそこの出来だったにも拘らず、
量が多くなると突然、
無茶苦茶な翻訳文を出してくるようになりました。
「テスト翻訳のときの人に訳してもらってください」
とお願いしても、
「あの先生は指名が多いので、
ご指定の納期では無理です」
と言われてしまいます。
それじゃ、テスト翻訳の意味、ないでしょうに...。

特に、中国語を日本語に翻訳する仕事では、
翻訳ソフトで翻訳したものを
そのまま出してきたのではないか、
と疑いたくなるような
ひどい日本語の翻訳文が出てきます。

何度も「日本人の方に翻訳して頂くか、もしくは、
日本人の方に最終チェックをしてもらったものを
納品してください」とお願いするのですが、
何回つき返しても
一向にまともになる気配はありません。

日本人の私が見れば、その翻訳文は
日本人が目を通したものでないことは
一目瞭然なのですが、翻訳会社は
「ちゃんと日本人の翻訳者に
チェックしてもらいました」
と言い張ります。

更に、量の多い翻訳になると、
初めの部分と終わりの部分では、
同じ単語でも訳し方が違うことが
しばしばでありました。
ひどいのになると、「である調」で始まった文章が、
途中から「ですます調」に変わっていたりしました。

結局、中国の翻訳会社は、
大きな翻訳の仕事が来ると、
文章をいくつかに分け、
手が空いている登録翻訳者に
分担して翻訳させるだけなのです。
そして、それぞれの翻訳者から出てきた
翻訳文をつなげて、ノーチェックで
依頼者に送りつけてくるのです。

こんな状態の中でも、
当社としては信用を保つため
お客様である日本企業には納期を守って、
品質のよい翻訳文を出さなければなりません。

単語の訳し方の統一、
「である調」「ですます調」の統一から、
翻訳ソフト並みの日本語を
まともな日本語にする作業まで、
「一から翻訳した方が楽なのではないか」
と思えるような膨大な作業を
納期直前にやらなければなりませんでした。

あるときは、お客様に
「朝一の会議で使う」と言われた資料の翻訳文を
徹夜で直して、翌朝会議開始直前に提出した、
なんてこともありました。

このとき私は、
これだけインターネットが発達しても、
中国の翻訳会社の4−5倍の料金を取る
日本の中国語翻訳会社が潰れないワケが、
いやというほどわかったのでした。


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2006年10月20日(金)

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