第643回
起業は人生の「リセット」か?

日本人は、待遇のよい一流企業に入るために、
一生懸命受験勉強をして一流大学に入ろうとします。
一流企業に入るためには、
一流大学卒の肩書きが必要だからです。

しかし、一流企業に入った人も、
会社を辞めて起業すると、
そこで人生が一回「リセット」されてしまいます。
起業して会社を興すには、
学歴は必要ありませんので、
今まで一生懸命やってきた受験勉強が
ほとんど無駄になってしまいます。

あれだけ苦労して、
いろいろなものを犠牲にして
受験勉強をしてきたのに、
会社を辞めて起業をすると、
学歴のない人と同じスタートラインに
立たなければならないのです。
これでは学歴が高い人ほど、
起業する気が起きなくなってしまいます。

一方の中国の人たちは、起業するために必要な、
最先端の技術やノウハウを習得するために一流大学に入り、
起業するために必要な、
高度な仕事の経験や業界の人脈を得るために
一流企業に入ろうとします。

ですので、一流企業を辞めて起業することは、
彼らにとっては人生の「リセット」ではなく、
待ち望んでいた「ステップアップ」なのです。

このため、私が丸紅を辞めて起業したときも、
日本人の友人たちは一様に「なんでまた...」
という反応だったのに対して、
中国人の友人たちはみんな「恭喜!恭喜!
(ごんし、ごんし、おめでとう、おめでとう)」
と祝福してくれたのでした。

日本の学生も中国の学生も
一流大学や一流企業に入りたがります。
しかし、その目的は、日本の学生が
一流大学卒の肩書きやよい待遇なのに対し、
中国の学生は将来、
老板(らおばん、オーナー社長)になるために必要な
最先端の技術だったり、良質な人脈だったりするのです。

起業が人生の「リセット」ととらえられている社会と
「ステップアップ」ととらえられている社会。
日中の起業率の差は、
こんなところに原因があるのではないでしょうか。


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2006年12月1日(金)

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