第658回
2007年、中国の経済成長が鈍化するワケ

中国国家発展改革委員会によれば、
2006年の中国の国内総生産(GDP)は
20兆元(300兆円)を超え、
前年比10.5%の伸びだった、とのことです。
これで中国は2003年から4年連続で
2ケタ成長をしたことになります。

しかし、国家情報センター経済予測部によれば、
2007年の成長率は9.5%と、
5年ぶりに10%を割り込むことが予想されています。

「中国の成長神話もこれまでか」などと思うなかれ、
この成長率の鈍化は、
中国政府の必死の投資抑制政策の賜物なのです。

2006年上半期、中国の固定資産投資は
前年同期比31.3%増と過熱気味に推移しました。
これに対し中国政府は、5回におよぶ金融引き締め、
不動産プロジェクトの見直しなどを行い、
2006年10月の固定資産投資伸び率は
前年同月比16.8%と、
5年ぶりの低い水準にまで下がりました。

今の中国経済は、中国政府がしっかりと
手綱を握っていなければ暴走してしまう、
暴れ馬のような状態なのです。

これに対して、2006年の消費者物価の上昇率は
1.3%と非常に低い水準に止まりました。

40年前の日本の高度経済成長期は、
給料が10%上がっても、
狂乱物価と呼ばれたインフレで
物価も10%上がってしまいましたので、
国民は余り豊かさを感じることは
できなかったかもしれません。
しかし、現在の中国の高度経済成長は、
給料が10%上がっても、
物価は1%しか上がらない、
という状況ですので、
国民は豊かになっていくのを
実感しているのではないでしょうか。

国民は自分が豊かになっていくことを実感できれば、
反政府的な運動に加担することもありませんので、
国内の政情は非常に安定します。

中国政府が今後も
共産党一党独裁体制を維持していくためには、
ほどほどの経済成長を長く続かせるのと同時に、
インフレを抑えて、国民の大多数に
豊かになっていることを
実感させ続ける必要があるのです。


←前回記事へ

2007年1月5日(金)

次回記事へ→
過去記事へ
ホーム
最新記事へ