第659回
急増する日本人駐在員の自殺

最近、中国に駐在する日本人駐在員が、
「心の病」にかかって自殺してしまうケースが
急増しているそうです。

私の身近でも以前、
知り合いの駐在員の方が自殺をしてしまい、
大変ショックを受けたことがあります。
その方は非常に明るくほがらかな方で、
普段お話ししていても、大きな悩みを
抱えておられるようには見えませんでしたので、
訃報を聞いたときには
にわかには信じられませんでした。

日本企業の中国駐在員だった私の経験から言うと、
日本人駐在員が「心の病」にかかってしまう
原因として考えられるのは、
1)商習慣の違い、2)生活習慣の違い、
3)本社の無理解、4)激務、
などが挙げられます。

一つ目の商習慣の違いは、
中国に駐在した日本人駐在員全員がぶち当たる壁です。
紙切れ同然の契約書、
なんだかんだ言って支払いをしない中国企業、
直前にならないと決まらない役人とのアポなどなど。

最近は中国企業もずいぶんと近代化して、
かなりまともになりつつありますが、
それでも「予定通りに行かないのが当たり前」
という気持ちで仕事をしないと、
神経がすり減ってしまいます。

また、駐在員は会社の外側だけでなく、内側、
すなわち、従業員の管理でも頭を痛めることとなります。

給料日になるとお互いの給料を教えあって、
毎月必ず誰かが「なんであんな仕事のできないやつより、
私の給料低いですか」と文句を言いに来たり、
社内で勝手に組合のようなものを作って、
団体交渉を仕掛けてきたり、
スキルを教えるとすぐに
同業他社に転職してしまったり。
世界の中でも会社への忠誠心がずば抜けて高い
日本人の従業員を扱うような気持ちでいると、
大変な目に遭うことになるのです。

日本人と中国人はなまじ顔が似ているので、
ついつい日本の常識で考えてしまいがちなのですが、
神経をすり減らさないためには
「中国の人たちの常識は、
日本のそれとは全く違うものである」
ということを肝に銘じて、
仕事をする必要がありそうです。


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2007年1月8日(月)

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