第660回
中国語と中国料理漬けの生活

商習慣の違いと同時に、生活習慣の違いも、
中国に駐在する日本人駐在員が
「心の病」にかかってしまう
原因の一つとして考えられます。

私が北京に来た10年前、
日本企業の北京駐在員はそのほとんどが
日本人用のアパートメントに住んでいました。
日本人用のアパートメントは日本のテレビが映りますし、
家の中で何か不具合があっても
スタッフが日本語で対応し、
すぐに直しに来てくれます。

会社に日本語を話せるスタッフがいて、
日本人用アパートメントに住んでいれば、
極端な話、1日中、中国語を一言も話さなくても、
駐在員が勤まったのです。

しかし、こうした日本人用アパートメントの家賃は、
日本の賃貸マンションよりはるかに高いので、
コスト削減のため、駐在員を
普通の中国人用マンションに住まわせる
日本企業も増えてきました。

中国人用マンションは中国のテレビしか映りませんし、
家の中で何か壊れたら、
建物のメンテナンスを請け負う物業管理会社との交渉は、
全て中国語でやらなければなりません。
単身赴任の人などは、それこそ1日中、
一度も日本語を聞いたり話したりする機会がない、
なんてこともありえます。

こんな状態では、中国語ができない人はもちろん、
中国語が上手な人でも、
かなりのストレスとなるのではないでしょうか。

住居の他にも、毎日中国料理を食べるのはつらい、
という人には、中国での駐在生活は
非常に厳しいものとなります。

北京には日本料理店がたくさんできてきていますが、
正直、まともな日本料理を出す店は少ないのが現状です。
また、数少ないまともな日本料理の値段は
中国料理の数倍もしますので、
経済的に言っても、毎日、
おいしい日本料理だけを食べて暮らす、
というわけにもいきません。

もちろん、日本人駐在員の中には、
1日中、中国語しか話せなくても平気だし、
毎日、中国料理を食べても苦にならない、
という人もいます。
むしろ、日本とは違う異国での生活を
積極的に楽しんでいる人もいます。

しかし、中国語と中国料理漬けの生活を
「つらい」と感じる人にとっては、
中国での駐在生活は
ストレスの蓄積以外のなにものでもないのです。


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2007年1月10日(水)

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