第661回
本社の無理解に苦しむ駐在員

中国に駐在する日本人駐在員の心をむしばむ、
3つ目の原因は「本社の無理解」です。

日本の本社は大きな期待をかけて、
中国に駐在員を送り出します。
しかし、中国がいくら景気がよい、と言っても、
何をやってもうまくいく、というわけではありません。
事前の調査では「いける!」ということで駐在員を出しても、
いざ、実際に商売を始めてみると、
予想できなかった様々な壁にぶつかる、
ということも往々にしてありえます。

そうした時に
「何しろ結果を出せ!
ごちゃごちゃと言い訳を言うな!」とか、
「こんなに景気のいい中国で売れないのは、
お前の能力に問題があるんじゃないか」
などと言われることは、
駐在員にとっては大きなストレスとなります。

本社の人たちは中国ビジネスを駐在員任せにせず、
足繁く中国に出張し、駐在員と同じ目線で
中国の現状を直視する必要があるように思います。

本社の人たちが中国ビジネスについて理解を深めるのは
非常に重要なことではありますが、
勉強しすぎて変な知識を蓄えてしまうのも、
これはこれで問題です。

大学の教授やシンクタンクの研究員が書いた
中国関係の本を読んだり、
セミナーに出席したりするのはよいのですが、
それで頭でっかちになってしまい、
「お前が言っていることは、
○○先生が言っていることと違う」などと言われるのも、
駐在員にとっては非常にいやなことです。

日本企業は中国に駐在員を出したら、
その人が言っている中国の現状を100%信じるべきです。
逆に言えば、100%信用できない人を
駐在に出すべきではないと思います。

また、中国に駐在すると、
中国企業が言っていることが、
あながち無茶苦茶ではないことが分かってきます。
日本企業とは考え方が違うだけで、
それはそれで論理的には筋が通っていたりするのです。

「日本の本社の言っていることもわかるが、
中国企業が言っていることもわかる」。
そうした板ばさみ状態に陥っているのに、
「お前はどっちの味方なんだ!」などと言って、
一方的に責めたてることは、
駐在員を精神的に追い詰める結果になりかねません。

駐在員が中国ビジネスで成果をあげるためには、
本社のサポートが不可欠です。
異国の地で奮闘する駐在員を
精神的に追い詰めないためには、
本社の人たちが駐在員を信用し、
同じ目線で中国の現状を見据える必要があるのです。


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2007年1月12日(金)

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