第706回
中国の働く人たちの環境

企業間の競争がまだそれほど激しくない、とか、
「職住近接」で通勤が比較的楽、というのは、
中国の働く人たちにとっては良いことなのですが、
中国の資本主義化や都市への一極集中により、
中国の働く人たちの環境も
徐々に過酷なものになりつつあります

従来の中国の国有企業は、
従業員の生活を保障するのが第一義であり、
利益は二の次でした。
従業員はがんばって働いても、
さぼっておしゃべりをしていても、
給料は同じでしたので、
がんばって働く人がいなくなってしまい、
国有企業の業績は軒並み低迷しました。

こんなことでは国有企業は税金を食い潰す
タックスイーターとなって、
国家財政を崩壊に導く恐れがある、
と危惧した中国政府は
WTO加盟、事業のリストラ、
民間企業との競争促進などの荒療治で
国有企業改革を進め、
中国経済全体を資本主義化しました。

こうした競争原理の導入による資本主義化により、
中国の働く人たちも
うかうかしていられなくなってきました。
日本の企業社会の競争に比べればまだまだですが、
今までのように一日中卓球をしたり、
ひまわりの種を食べたり、
同僚とおしゃべりをしたりしていては、
お給料がもらえない世の中になりつつあるのです。

また、中国経済の都市への一極集中が進むのに従って、
街の中心部に住んでいた働く人たちは
どんどん郊外に追いやられ、その跡地には、
オフィスビルや高級マンションが建てられています。

郊外に追いやられた人たちは、
街の中心部にある会社まで路線バスに乗って通勤します。
このため、朝の通勤時間に郊外から来る路線バスは、
まさに通勤地獄の様相を呈しています。

中国の朝の通勤、と言えば、自転車の大群が有名ですが、
最近はその数がめっきり減っています。
これは会社まで自転車で通える距離に住んでいる人が、
どんどん減っているためではないか、と思います。

働く人たちのために創られた国・中華人民共和国。
この国は今、未曾有の経済成長に沸いていますが、
働く人たちにとっては、
どんどんつらい国に変貌しつつあるのです。


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2007年4月27日(金)

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