第753回
会社設立は中国起業の入学試験

拙著「起業するなら中国へ行こう!」(PHP新書)が
発行されて1年が経ちました。

アマゾンのランキングを見ると、
ときどきえらく順位が上がっていることがありますので、
発行から1年経った今でも、
買って頂いている方はいらっしゃるようです。
本当にありがたいことです。

中国ビジネスの入門書としては、
様々な側面を網羅していますので、
われながらよくできた本だと思うのですが、
よくご指摘を頂くのが
「中国起業の本なのに、
中国での会社設立の具体的な方法が一切書かれていない」
という点です。

特に外国人が中国で会社を設立するに当たっての
最低資本金については、
そもそも中国で起業するのかどうかを決定するに当たっての
最初の関門となりますのでみなさんの関心も高く、
メールやお電話でご質問を頂くことも多いです。

ただ、そうした場合、私は
「中国語で会社設立の概要資料を作って、
管轄の工商局に相談に行ってください」
とお答えしています。

「なんだ、カネを払わないと教えてくれないのか、ケチ」
と言われそうですが、これには2つ理由があります。

1つは、中国にももちろん法律はありますが、
その解釈については現場のお役人に
大きな権限が与えられているためです。

このため、法律では禁止されていても、
内容によっては「特例」として許可が下りたり、
法律上は何の問題がなくても、
なんだかんだと難癖を付けられて、
許可が下りなかったりすることがままあります。

こんなですので、私も本に
法律の規定を載せることはできたのですが、
本当は会社設立ができたのに、
法律の規定を見て諦めてしまったり、
逆に、法律の規定に基づいて起業計画を立て、
日本での会社勤めを辞めて中国に渡って来たのに、
肝心の会社が設立できなかった、
なんていう人が出てくる可能性がありますので、
あえて載せなかった、というのが本当のところです。

2つ目は、中国語で会社設立の概要資料を作って、
工商局に相談に行くぐらいのことができないと、
その後の会社経営は絶対に失敗するからです。

これはなにも日本人本人がそれをできる必要はありません。
そうしたことをきちんとやってくれる
中国人のパートナーや従業員がいればいいのです。

もちろん、私が代わりに工商局に相談に行って、
会社の設立までやってあげることもできるのですが、
会社を設立した後に何か問題が発生した場合、
日本人本人がその問題を処理できるか、
または、問題を処理してくれる
中国人パートナーや従業員がいるかしなければ、
会社を設立できないことよりも、
もっとずっと恐ろしい結末を
迎えてしまう可能性が大いにあります。

会社設立をマニュアルに頼らないで行うことは、
中国起業の入学試験のようなものなのです。


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2007年8月15日(水)

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