第754回
今の日本が中国に学ぶべきことは全くないのか?

「起業するなら中国へ行こう!」の内容で、
もう1つご指摘が多かったのが、
「なんでおまえは日本人のくせに、
中国の肩ばかり持つのか」というものでした。

私は中国の肩を持ったつもりは全くなかったのですが、
読み方によってはそういう風に読めるんだ、
ということがわかり、
これはこれで大変勉強になりました。

私の印象では、当時、
日本で発行されていた中国関係の本は、
中国の病んだ部分をあげつらい
「もうすぐ中国は崩壊する」と煽るものか、
中国人の非常識な行動
(これも私たち日本人から見ての非常識ですが)
をおもしろおかしく書いたものがほとんどでした。

そんな中で私は、中国に長く住む日本人として、
どちらかの国の立場に偏ることなく、
できる限り公平中立な目で
今の中国、今の日本を見つめ、
お互いの悪いところ、よいところを理解して、
お互いのよいところを学びあおう、
という本を出したいと思いました。

しかし、第6章に「中国に学ぶ!
―今の日本が中国に学ぶことはたくさんある」と題して、
「経済的には日本の方がまだまだ上ですが、
今の日本が中国から学べることもあるのではないでしょうか」
という主旨の文章を書いたことが、
一部の「愛国者」の方々の気に触ったようです。

私は日本より中国の方が優れている、
などとは全く思っていません。
むしろ、経済発展の度合い、社会の秩序、治安、
国民の教育レベルなどなど、
どれをとってもまだまだはるかに日本の方が優れている、
と考えています。

しかし、「日本は優れていて、中国は劣っている」
という文章を書いても、
犬が人を噛むぐらい当たり前のことなので
何の意味もありません。
「多くの日本人が自国よりも遅れていると考える中国にも、
日本が経済発展の過程で失ってしまったものや、
日本を更によくするためのヒントがあるのではないですか」
というのが拙著第6章の主旨です。

先日、河北省で男性が自分の愛犬を襲った犬を噛み殺す、
というニュースがありました。
これと同じで、人が犬を噛んだらニュースになりますが、
犬が人を噛んでも当たり前すぎて
ニュースにはならないのです。


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2007年8月17日(金)

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