第806回
中国株の小バブル崩壊

11月14日の第792回
「バブルの主役は金持ちから一般庶民へ」で、
「最近、中国人の友人と話すと、
不動産や投資信託の話ばっかりです」
というお話をしましたが、
そのほんの1ヶ月後の現在、
私の友人で株や投資信託の話をする人は
全くいなくなってしまいました。

原因は大幅に下落した中国株の株価です。
8月中旬に5000ポイントだった上海総合指数は
10月中旬には6500ポイント近くまで上昇しましたが、
その後下落に転じ、現在では5000ポイント前後まで
下がってしまいました。

このため、株価が上昇し、
「早く買わなきゃ損だ!」という熱狂的な雰囲気の中で、
全財産を投じて株や投資信託を買った人たちのほとんどは、
今や大きな含み損を抱えており、
株や投資信託の話をするのもイヤだ、
という状態なのではないかと思います。

今年から「ハンセンAHプレミアム指数」
というのができました。
これは、中国本土(A株)と香港(H株)の
両方の株式市場に上場している銘柄の
株価の差を指数化したものですが、
私はこれを密かに
「中国株バブル指数」と呼んでいます。

H株の株価は企業業績をきちんと分析して投資する
成熟した外国人投資家によって形成されますが、
A株の株価は企業業績とは関係なく、
目先株価が上がりそうな銘柄にやたらめったら投資する
未成熟な中国人投資家によって形成されます。

その「実際の企業業績が伴わない、
値上がり期待のプレミアム部分」が
いわゆる「バブル」であり、
これは中国人投資家が成熟するに従って、
A株の株価がH株の株価まで落ちていくことによって
解消されていくのではないかと私は思います。

ですから、中国人投資家がA/H価格差の大きな銘柄を避けて
A株を買うのは正しいですが、
外国人投資家がA/H価格差の大きな銘柄を狙って
H株を買うのは間違いなのではないか、と思います。

ともあれ、今回の中国株の小バブル崩壊で、
株式投資初心者の中国の一般庶民が
「株って上がるだけじゃなくて下がることもあるんだ」
ということを身を以って学んだことは、
中国人投資家の成熟、延いては
壊滅的なバブル崩壊の回避という観点から見て、
たいへん良かったのではないかと思います。

更に「株式投資にうつつを抜かし、
株価が気になって仕事に身が入らない人が大幅に減った」
という点も考慮に入れれば、
今回の中国株の小バブル崩壊は、
長期的には中国経済に対し、
大きくプラスに働くのではないか、と思います。


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2007年12月17日(月)

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