第845回
引く手あまたのブルーカラー人材

今中国では、大卒の事務職など、
いわゆるホワイトカラーの就職戦線は
氷河期が続いているのですが、
工場労働者や土木労働者など、
いわゆるブルーカラーの人材は引く手あまたで、
各社とも人材の確保に苦労しているようです。

当社も子会社の外運華通の仕事が急増しており、
引越作業員の人材を拡充したいのですが、
なかなか人材を雇うことができずに頭を痛めています。

中国にはホワイトカラーの人材を紹介する
人材紹介会社はたくさんあるのですが、
私の知る限りブルーカラーの人材を紹介する
人材紹介会社はないようです。
人材紹介会社は紹介が成立すると
本人の初任給の2〜3ヶ月分を手数料として取るのですが、
給料の安いブルーカラーを紹介しても
商売にならないのでしょう。

仕方なく外運華通では、
従業員に同郷の知り合いを紹介してもらったり、
新聞広告を出して募集をかけたりしていますが、
なかなかうまくいきません。
「仕事はあるのに、人が足りない」
というのは贅沢な悩みではありますが、
ブルーカラー人材の不足が、
今の当社の成長を阻む
最大の要因となっていることは確かです。

こんな状況ですので、最近、
中国のブルーカラー人材の給与水準はうなぎのぼりです。
上海の建築現場で働く、
民工(みんごん)と呼ばれる出稼ぎ労働者の平均給与は
月1,600元(24,000円)まで上がっているそうです。

これに対し、就職氷河期の大卒者の初任給は、
北京で平均2,200〜2,400元(33,000〜36,000円)、
黒龍江省に至っては800〜1,000元(12,000〜15,000円)
と言われていますので、
黒龍江省で大学を卒業した人は、
地元企業に事務職として就職するより、
上海に出稼ぎに出て中卒の民工と一緒に
建築作業員として働いた方が給料が良い、
ということになってしまいます。

需要と供給のアンバランスが招いた逆転現象ですが、
今後、職にあぶれた大卒者が、
引く手あまたのブルーカラー人材マーケットに流れ込む、
という可能性は小さいのではないかと思います。
なぜなら、中卒の民工と同じ条件で働くことになれば、
膨大な時間と労力とおカネを費やして受けた高等教育が
全く無駄になってしまうからです。

こうしたことから、今後中国では、
どんどん増える大卒者は職にあぶれる一方で、
ブルーカラー人材は更に逼迫する、という、
需要と供給のアンバランスによる
人材マーケットの二重構造が、
益々顕著になっていくのではないでしょうか。


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2008年3月14日(金)

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