第844回
高度経済成長下での就職氷河期

景気後退の懸念はあるとは言え、
依然として10%前後の高度経済成長を続ける中国ですが、
これだけの好景気においても、
大卒者の就職戦線はずっと氷河期が続いています。

中国教育部の発表によれば、
今年中国で大学を卒業する人は559万人。
去年より64万人増えて、過去最高となる見通しです。
中国の大学進学率は現在20%強ですが、
この比率は今後どんどん上昇し
2020年には40%に達すると言われていますので、
大学を卒業する人の数もそれにつれて
どんどん増えていくことが予想されます。

しかし、教育部によれば、
現在、大学を卒業した人の就職率は70%程度。
今年559万人が大学を卒業しても、
168万人が就職できない、ということになります。

教育部はこの就職難を
「大卒者が急増したため」と分析しています。
確かに、職の数の増加が大卒者の数の増加に
追いついていない、というのもあるのかもしれませんが、
私には量の問題よりも大卒者の質の低下が、
高度経済成長にも関わらず就職氷河期となっている
原因なのではないか、と思えます。

大学進学率が低かった以前の中国では、
大卒者は超エリートの「学士様」でした。
彼らはエリートの名に恥じないように必死で勉強し、
企業は優秀な幹部候補生として彼らを採用しました。

しかし、大学進学率が上昇し
大卒が超エリートの代名詞では
なくなってきているにも関わらず、
一部の人たちは「大学の卒業証書さえあれば、
一流企業のエリートとしてのキャリアが保証される」
と勘違いし、仕事の実力はないのに
プライドだけが高い大卒者が増えてきました。

昨年、第776回 低下する「大卒」の価値、でご紹介した、
「大学を卒業したのに就職できなかった」と大学を逆恨みして、
学生寮を破壊したり、家具を燃やしたりした
甘ったれ坊主どもはまさにこうした人種です。

今の中国ではもはや、大卒はエリートを意味しません。
日本でも「高学歴の自分にふさわしい仕事でなければやらない」
という高学歴ニートが増えているそうですが、
中国の大卒者就職難の本質は、仕事の実力はないのに
プライドだけが高い大卒者の勘違いにあるのではないか、
と思います。


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2008年3月12日(水)

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