第901回
日本は成熟した民主主義国家と言えるのか?

今の日本では民主主義に疑問を呈しただけでも
危険人物扱いされることは十分承知しています。

しかし、ここであえて「今の中国には民主主義より
一党独裁体制の方が合っているのではないか」
というお話をさせて頂いているのは、
私は中国という国を12年間間近に見てきて、
現時点では地球上で最高の
政治思想であるとされている民主主義が、
国の発展段階によってはうまく機能しないのではないか、
と思うようになったからです。

ですので、これは飽くまで一個人の感想と捉えて頂き、
民主主義に疑問を呈されることを
不愉快に感じる方がいらっしゃいましたら、
深くお詫びを申し上げるとともに、
本件についての一連の文章は読み飛ばして頂いて結構です。

さて、今では堂々たる民主主義国家となった日本ですが、
初めての国政選挙となる衆議院議員選挙が行われたのは
ほんの100年ちょっと前、1891年(明治23年)のことです。

それもその時に選挙権を与えられたのは
中学校の頃に歴史の授業で習ったように、
「直接国税を15円以上を納めている25歳以上の男子」のみで、
この条件を満たしているのは全人口のわずか1.1%でした。

当時の日本は人口のほとんどを
学のない農民が占める発展途上国。
欧米の先進国に負けない近代国家を建設するために
欧米諸国のマネをして憲法や国会を作ったものの、
前回お話したような民主主義のリスクに気付き、
全国民の1.1%にしか選挙権を与えない
制限選挙にしたのでしょう。

日本はその後先進国の仲間入りをし、
国民のほとんどが高等教育を受けるようになり、
選挙権は20歳以上の国民全員に
与えられるようになりました。

しかし、最近の日本のニュースを見ていると、
今の日本が、刹那的な私利私欲ではなく、
国の将来を深く考えた上で現在の政策を決める
知性と理性を持ち合わせた国民を擁する
成熟した民主主義国家と言えるのかどうか、
ちょっと疑問に思うこともあります。

一部の自民党の国会議員は
「衆議院選挙を控えているので、
今は消費税増税の話はしない方がよい」
などと言っているようですが、
こんなに国民をバカにした話はありません。
これではまるで「日本の国民はバカだから、
国の将来など考えられない。
選挙の時には甘い言葉で票を集めて、
増税の話は選挙に勝ってから持ち出そう」
と言っているのと同じです。

国会議員にこんなことを言わせないためにも、
成熟した民主主義国家の国民は、
「増税には反対だが、社会保障はきちんとして欲しい」
などと言っていてはいけないのです。


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2008年7月23日(水)

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