第910回
世界初!インターネット民主主義国家誕生か?

6月末、胡錦涛国家主席は
中国共産党機関紙・人民日報の本社に赴き、
同社が運営するウェブサイト「人民網」の掲示板
「強国論壇」で「網民」と交流しました。

「強国論壇」は辛口の書き込みが多いことで有名な掲示板ですが、
胡主席が「みなさんの提案や意見に
われわれは非常に関心を持っている」と呼びかけたところ、
「人民的好主席(れんみんだはおちゅーしー、人民の良き主席)」
など好意的な書き込みが殺到したそうです。

胡主席の狙いは中国共産党が民衆の側にいることを示すこと。
そして「腐敗した地方の役人に憤っているのは、
共産党中央も同じなんですよ」ということをアピールすることです。

中国共産党は一党独裁体制が崩壊するかもしれない
危機的な状況に陥っているにも関わらず、
一部地方の木っ端役人は全く危機感なく
腐敗を繰り返しています。

共産党中央は取り締まっても取り締まっても
根絶できない腐敗に手を焼いているのですが、
民衆から見れば地方の木っ端役人も共産党中央も同じ中国共産党。
地方の木っ端役人の腐敗に対する民衆の憤りが、
いつ中国共産党全体への批判に形を変えて、
大規模な暴動に発展するかわからないような状態が続いています。

今回、胡主席が「網民」の側に付いたことによって、今までの
民衆 対 中国共産党(腐敗木っ端役人+共産党中央)
という構図が、
反腐敗連合(民衆+共産党中央) 対 腐敗木っ端役人、
という構図に変わりました。

今後、共産党中央は「網民」の意見を参考にしながら、
腐敗木っ端役人を取り締まったり、
政策を決定したりしていくものと思われます。
このスタイルが確立すれば、中国は世界初の
「インターネット民主主義国家」になるかもしれません。

その時々の国家の懸案について
「憤青」がそれぞれの意見を戦わす。
全国民の18%、2億3,000万人に及ぶ
インターネットを使える高学歴の「網民」が、
それらの意見を吟味して世論を形成する。
中国共産党はその世論を参考にして政策を決定する。

中国がインターネット民主主義国家になれば、
3-4年に一回しか国政選挙がないその辺の民主主義国家より、
ずっと敏感に民意を政策に反映した
政治ができるのではないでしょうか。


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2008年8月13日(水)

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