第912回
北京のタクシー運転手英語教育大作戦

高級ホテルや欧米人向けレストラン以外では、
ほとんど英語が通じない北京の街ですが、
オリンピックでたくさんの外国人のみなさんが来られるに当たって、
さすがに「みなさん中国語を話せるようになってから来てください」
とも言えませんので、中国政府も
サービス業に従事する人たちの英語教育には力を入れました。

泊まるところは高級ホテルであれば英語が通じますし、
食べるところも欧米人向けのレストランに行けば
英語を話せるウエイトレスがいるのですが、
問題は市内の移動です。

中国政府は早くからこの問題に気付いていたらしく、
2001年に北京でのオリンピック開催が決まるとすぐに、
北京のタクシー運転手の英語教育に着手しました。

当時は各タクシー会社がタクシーの運転手に英語の学習を義務付け、
一部のタクシーの運転手はテスト対策のために
一日中車内で英語のテープを流している、
という熱の入りようでした。

しかし、その後英語のテープを聴いているような
熱心な運転手はどんどん減り、
とうとうオリンピックを迎えるに至ってしまいました。

オリンピックの直前に北京のある日本語雑誌が
「北京でタクシーに乗って、英語のみで目的地に到達できるか?」
という企画を記事にしていました。
ちょっと意地悪ではありますが、タクシーに乗って
「To Grand Hyatt Hotel, please」とか、
「To Forbidden City, please」など英語だけを使って、
果たして目的地に到達することはできるのかという実験です。

結果は案の定全滅。
運転手は「はぁ?」と聞き返したり、
中国語で「どこ?」を繰り返すばかり。
7年間に及ぶ北京のタクシー運転手英語教育大作戦は、
大失敗に終わったようです。

北京オリンピックも中盤を迎え、
北京の街にはたくさんの外国人が来ています。
そして、多分多くのタクシーの車内で、
英語しか話せない欧米人旅行客と、
中国語しか話せないタクシー運転手との間で、
果てしない平行線の戦いが繰り広げられているのです。


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2008年8月18日(月)

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