第924回
北京オリンピック後の中国経済?

今、日本では多分いろいろな立場の方が
「北京オリンピック後の中国経済」という題名で
文章を書かれていると思います。

しかし、そもそも北京オリンピックの前後で
「前はこうだったが、後はこう」と論じるのは、
あまり意味がないと私は思っています。
なぜなら、北京オリンピックが
中国経済全体に与えた影響は非常に小さかったからです。

中国の政府系シンクタンクの試算によれば、
2002年から2007年までの北京の経済成長率は年平均で12%。
うちオリンピック開催による押し上げ効果は2%だったそうです。
オリンピック開催に関わる投資は2800億元(4兆5000億円)で、
うち競技場建設などの直接投資が10%、
残りの90%は空港ターミナルや地下鉄などの
関連インフラ整備に充てられました。

一見、オリンピック開催のためにものすごい金額が投入され、
北京の経済を下支えしたかのように見えますが、
逆に言えば、北京はオリンピック開催による
押し上げ効果がなくなっても
10%の経済成長が可能ということですし、
北京の域内総生産(GDP)の70%は第三次産業であり、
建設業がGDPに占める割合は5%と低いため、
オリンピック関係のインフラ整備がなくなっても
北京経済に与える影響は限定的です。

更に、中国全体のGDPに占める北京の割合は
わずか3.7%ですので、
万一北京の経済が落ち込んだとしても、
中国経済全体に与える影響はそれほど大きくないと言えます。

それでも北京オリンピックが終わって
改めて中国経済を眺めてみたら、
経済成長が鈍化する可能性が出てきているため、
「東京オリンピック後の40年不況のように、
中国もオリンピック景気が終わって不況の時代に入る」
と言う人がいるかもしれませんが、
これは中国政府がインフレ抑制のために行った
金融引き締めの効果が出すぎてしまったために
そうなっているだけであって、
オリンピックとは何の関係もありません。

「オリンピック景気」とか
「オリンピック後の不況」などと言うと
確かに非常に分かり易いのですが、
中国経済は既に
オリンピック開催ぐらいではびくともしないぐらい
大きく且つ多様なものになっているのです。


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2008年9月15日(月)

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