第925回
オリンピックで儲かった人、損した人

今回の北京オリンピックでは儲かった人よりも、
損した人がはるかに多かったのではないかと思います。

環境対策やテロ対策のため、あらゆる規制が強化され、
トラブルが発生した会社、コストが大幅に上昇した会社、
営業停止を余儀なくされた会社などたくさんあるようです。

当社もトラックの市内走行規制や税関の規制強化で
例年であれば海外引越の繁忙期であるにも関わらず、
この2ヶ月間はまともな商売ができませんでした。
とてもオリンピック景気で浮かれるような雰囲気ではなく、
何しろ嵐が通り過ぎるまでじっとガマンして耐え抜く、
という感じでした。

オリンピックの恩恵を被る大本命と言われていた旅行業界でも、
ふたを開けてみればホテルは空室だらけで
オリンピック期間中に値下げ競争、
航空会社や旅行会社も
例年のように夏休みを利用して北京に観光に来る人がおらず、
旅行客がオリンピックのチケットを持った人に限られたため、
前年比マイナスになったところが多かったようです。

では、儲かった人は誰なのか。
それは「秀水街(しゅうすいじえ)」の
ニセモノブランド屋です。

「秀水街」は北京市中心部にある
小規模店舗がたくさん入った商業ビルで、
「ニセモノ天国」として有名なところです。

ここ数年は欧米諸国からの批判を受けて
中国政府も本格的に知的財産権の保護政策を強化し、
ニセモノブランド品の販売を取り締まっているのですが、
そこは「上に政策あれば、下に対策あり」の国、
店頭には置いてなくても店員に言えば
店の奥からニセモノが出てくるのだそうです。

「秀水街」にはオリンピック期間中、
世界各国、特に欧米諸国から来た
オリンピック関係者や観光客が殺到し、
8月19日は1日当たりの来客数としては
過去最高の5万3000人を記録したそうです。
また、一般の観光客だけではなく、
オリンピックの開催に合わせて訪中した
20カ国の首脳、夫人も訪れ、
その中にはブッシュ元大統領(父)も含まれているそうです。

ブッシュ父がニセモノを買うとは思いませんが、
ニセモノの取り締まりを徹底している他のマーケットは
閑古鳥が鳴いていたと聞きますので、
一般の欧米人観光客がニセモノを買うために
「秀水街」に行っているのは紛れもない事実です。

欧米諸国が中国政府に対策を求めても、
当の欧米人が買いに来るので
ニセモノが売り続けられる「秀水街」。

欧米諸国は中国政府に対策を求める前に、まずは自国民に
「中国に行ってもニセモノを買うのはやめましょう」
という教育をすることから始めた方が良いのかもしれません。


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2008年9月17日(水)

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