第939回
「京論壇」

先日、私は北京大学に行って京論壇2008のみなさんに
レクチャーをさせて頂きました。

京論壇とは東京大学と北京大学の学生が、
北京、東京を相互に1週間ずつ訪問し、
生の中国、生の日本に触れながら分科会形式で
現在の日中が抱える問題を共通言語である英語で議論し、
その結果を社会へ発信するという活動です。

2006年から始まったこの活動は今年で3年目を迎え、
新聞やテレビなどでも取り上げられていますので、
ご存知の方も多いのではないでしょうか。
また、今年7月には東京大学側の実行委員会が
過去2年間の活動の軌跡をまとめた
「東京大生×北京大生 京論壇 
−次世代が語る日中の本音」(明石書店)
という本を出版しています。

この本、東京大学側のスタッフの方から頂き
読ませて頂いたのですが、たいへんすばらしい本です。
「環境」、「歴史認識」、「経済」、「安全保障」の
4分野の日中関係について討論する中で、
東京大学の学生、北京大学の学生とも、
お互いが持っている認識の違いに驚き、
相手方を理解しようとする努力を続けながら、
両国が今後どのような形で
お付き合いをしていけばいいのかを
模索する姿がリアルに描かれています。

京論壇に参加している東京大学の学生は
中国の専門家ではなく、
北京大学の学生も普段は
日本とは全く関係のない勉強をしている人が多いので、
討論に入る前のテーマやスケジュールを打ち合わせる段階から
既に意見がぶつかりまくってしまうのですが、
彼らがエラいのは意見がぶつかった時に
お互いが相手の立場に立って考えて、
何とか相手を理解しようと努力するところです。

今、日本にはたくさんの「嫌中」の人たちが、
そして、中国にはたくさんの「反日」の人たちがいますが、
そういう人たちの中で本当に相手のことを
理解した上で嫌ったり反対したりしている人が
どれだけいるのでしょうか。
京論壇の学生のように相手の国に行って、
相手の国の人たちと腹を割って話し合ったことのある人が
どれだけいるのでしょうか。

私は手放しで日中友好を唱える人たちには
非常に違和感を覚えますが、
相手のことを理解しようともせずに
嫌ったり反対したりする人たちもどうかと思います。
どうせ嫌ったり反対したりするならば、
相手の国に行って、
相手の国の人たちと腹を割って話し合った上で、
改めて嫌ったり反対したりしても
遅くはないのではないか、と私は思います。

「京論壇」ホームページ
http://jingforum.org/jp/index.html


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2008年10月20日(月)

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