第947回
中国の人材は「富士山型」から「つぼ型」へ

前回は「中国人材5段階説」という題名で、
人材には大きく分けて以下の5つのレベルがあるのではないか、
というお話をしました。

1.言われたこともやらない人
2.言われたことだけをやる人
3.自分で仕事を探して自律的に働く人
4.チームをまとめてその結果に責任を負う人
5.新規の事業を立ち上げてその結果に責任を負う人

起業をした場合、会社を成長させていくためには
4及び5の優秀な人材が不可欠ですが、
中国でこうした人材をみつけるのは至難の業です。

4のチームをまとめてその結果に責任を負う、
いわゆる管理職の仕事ができる人材は、
中国では3の人材より更に少なくなります。

中国には担当者としての仕事の能力はあるのに、
管理職をやらせると部下を使いこなせない人が
多いように思います。
そういう人は仕事を全て自分で抱え込んでしまい、
本人は毎日死ぬほど忙しいのに
部下はヒマにさせてしまいます。
部下の能力をうまく引き出せる管理職人材は、
今の中国で最も需要が大きいにも関わらず、
最も供給が足りない人材の一つなのではないかと思います。

そして5の新規の事業を立ち上げて
その結果に責任を負う人。
こんな人材が社内に何人もいれば、
会社の将来は安泰ですが、
このレベルの人材になると、
人材市場に出てくることはまれで、
会社の中にいても
早晩独立してしまうのではないかと思います。
日本ではこうした人材もその多くが
会社の中で能力を発揮しますが、
中国ではそれだけの能力があれば
自分で事業を立ち上げた方が良い
と考える人が多いように思います。

もちろん、最近は日本でも「中国は優秀な人材の宝庫」
という認識が広がっているぐらいですから、
私が知らないだけでたくさんの優秀な人材が
いるのかもしれません。
しかし、私の個人的な印象では、
中国の人材市場はごく少数の5の人を頂上、
大量の1の人を裾野とした
「富士山型」に人材が分布しているように思います。

「世界の工場」だった時代の中国は、
少数の5の人材がシステムを作り、
大量の1や2の人材にそのシステムの中で
単純作業をさせていれば経済は回っていきました。

しかし、産業の構造が製造業中心からサービス業中心へ、
提供されるモノやサービスも
低付加価値なものから高付加価値なものへと
転換していく今後の中国においては、
3と4の人材が大量に必要となってきます。

中国が産業構造を転換して今後も発展を続けていくためには、
人材の質の底上げを行い、従来の「富士山型」から
3・4の人材が多い日本のような「つぼ型」に
近づけていくことが不可欠なのではないかと私は思います。


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2008年11月7日(金)

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