第1011回
「拙速」と「完璧主義」

中国では新しく開店したレストランに行くのも
避けた方が無難です。
なぜなら、新しく開店したレストランの中には、
とんでもなくまずい料理を出してくる店があるからです。

そうした料理は、オーナーも店長も、
更にはそれを作っているコック本人でさえも
開店前に試食をしているとは思えません。
誰かまともな人が試食をしたら、
こんなものは絶対に世の中に出てこないだろう、
というぐらいまずい料理なのです。

日本人の場合、そういうまずい料理が出てきたら、
一口食べて後は残し、二度とその店には行きませんが、
食べ物に並々ならぬ情熱を傾ける多くの中国の人たちは、
ウエイトレスを呼んで
「この料理、油が多すぎる。作り直せ!」と作り直させたり、
店長やコックを呼んで
「お前この料理食べてみろ!おいしいと思うか?
オレはこんなものにカネは払わないからな!」
と料理を付き返したりします。

こうした「親切な」お客さんの厳しいアドバイスの下、
だんだん味が調整されていくのですが、
せっかくのアドバイスを生かさずに
まずい料理を出し続ける店は、
やがてお客が寄り付かなくなりつぶれます。

ですから、新しく開店したレストランに行くのは避け、
開店してから半年ぐらい経っても
つぶれていないレストランに行くようにすれば、
とんでもなくまずいものを食べさせられるリスクは
少ないと言えそうです。

マンションにしてもレストランにしても、
中国ではどうしてこんなことが起こるのでしょうか。

それは、中国の人たちには
とりあえず思いついたらすぐに始めてみて、
お客から文句が出たら調整すればいいや、という
「拙速を旨とする」人が多いからであるように思います。
そんな人たちが多いため、
事前に様々なケースを考え尽くして
万全の準備をする日本人の「完璧主義」が、
ここ中国では輝きを放つのです。

「拙速」ではお客の信頼が得られず
せっかくの良いアイデアが失敗に終わってしまうリスクが
大きくなってしまいます。
しかし逆に、時代の流れが速い現代において
過度な「完璧主義」で時間をかけていては、
お客を逃してしまう可能性も出てきます。

日本人も中国人もお互いの良いところを学び合い、
「拙速」と「完璧主義」両方の利点を
自分の商売に生かしてくれれば良いな、と思います。


←前回記事へ

2009年4月3日(金)

次回記事へ→
過去記事へ
ホーム
最新記事へ