第1012回
中国はデフレ状態に入ったのか?

中国の2月の消費者物価指数(CPI)は
前年同月比1.6%下落と、
2002年12月以来6年2ヶ月ぶりに
マイナスとなりました。

中国のCPIの伸び率は、
豚肉などの食品価格の高騰で
2007年半ばから上昇ペースが加速し、
2008年2月には8.7%とピークに達しました。
しかしその後、国際商品相場の下落、
輸出の鈍化などを背景に下落を続け、
わずか1年でマイナスを記録するに至りました。

品目別では物価高騰の時に最も上昇幅の激しかった豚肉が
前年同月比18.9%と大幅に値下がり、
非食品でも携帯電話を始めとする通信機器が18.6%、
自動車燃料・部品が9.2%とそれぞれ大幅に下落しました。

こうした状況を受けて北京市内のレストランでも、
値下げに踏み切るところが増えてきました。

北京の多くのレストランは、
物価高騰の時に値上げを機会に
メニューを新たに作り直したのですが、
1年ちょっとで今度は
値下げをすることになってしまいました。
しかし、かと言って
1年ほどしか使っていないメニューを捨てて、
また新たにメニューを作るのは
あまりにももったいないですので、
値段のところに小さな紙を貼って
そこに値下げ後の価格を
手書きで書いているお店が増えています。
物価が乱高下するとレストランも対応が大変です。

また、需要の減少を受けて、
ヤケクソになっているとしか思えない、
極端な値下げをする会社も出てきました。
格安航空会社・春秋航空は上海発大連行きの航空運賃を
91%引きの99元(1400円)に設定しました。
上海から大連まで飛行機に乗れば2時間ほどですが、
この運賃は20時間以上かけて
汽車で行くよりもずっと安い値段です。

極端な値下げをしているのは
格安航空会社だけではありません。
大手航空会社の中国南方航空も
上海発北京行きを83%引きの197元(2800円)、
上海発深セン行きを82%引きの247元(3600円)に設定しました。
航空会社は空のまま飛行機を飛ばせば、
その分赤字になるだけですので、
8割引、9割引でも何しろ席を埋めた方が良い、
という判断なのでしょう。

国家統計局は
「通貨緊縮(とんふおじんすお、デフレ)とは
文字通り通貨供給量(マネーサプライ)の不足によって
物価が下がることだが、
中国の今年1月末のマネーサプライは
前年同期比18.8%も増加している。
よって、中国はデフレ状態には入っていない」
としています。

しかし、いくらマネーサプライが増えても、
人々が将来に不安を感じ、手に入れた現金を
どんどんタンスに貯めこんで消費をしなければ、
需要は上がらず結局デフレと同じ状態になります。

中国がデフレスパイラルに陥るのを避けるためには、
中国政府は財政出動や金融緩和により
マネーサプライを増やすのと同時に、
雇用保険や医療保険の更なる充実を図り、
人々が安心して消費をできる
環境を作ることが必要なのではないか、と私は思います。


←前回記事へ

2009年4月6日(月)

次回記事へ→
過去記事へ
ホーム
最新記事へ