第1028回
おカネと幸せのカンケイ

「もうすぐこの子の誕生日だけど、
誕生日プレゼント、何にしましょうか」
「後で1万元渡すから適当なものを買っておいてくれ」
「...」

これは先日、
北京市内のある高級レストランで食事をしていたときに、
隣の席の1-2歳の子供を連れた若い夫婦がしていた会話です。

世界的な金融危機は中国経済にも大きな影響を与えていますが、
1-2歳の子供に1万元(14.5万円)の誕生日プレゼントとは、
カネはあるところにはあるもんですなぁ。

ただ、私が気になったのは最後の妻の沈黙「...」です。
妻が期待していた夫の答えは
「何にしようか。後で一緒に見に行こう」だったはず。
それが1万元の札束をポンと渡されて、
「何でもいいから適当に買っとけ」では、
身も蓋もありません。

夫にしてみれば「オレは家族の幸せのために
たくさんカネを稼がなくてはならないので死ぬほど忙しい。
必要なカネはいくらでも渡すので、
子供の誕生日プレゼントなど家のことは
お前が仕切ってくれ」ということなのでしょうが、
このことが発端で夫婦喧嘩が始まったり、
それを見た子供が泣き出したりして
不幸な家庭になってしまっては、
夫は何のために死ぬほど働いて
おカネを稼いでいるのかわからなくなってしまいます。

おカネがたくさんあれば幸せになれる。

今まで中国の人たちは固くそう信じて、
おカネ儲けに狂奔してきました。
しかし、ここに来て「おカネのあるなしと
幸せの度合いは必ずしも比例しないのではないか」
という疑問がみなさんの心の中で芽生えつつあります。

中国で行われたあるアンケート調査によれば、
年収100万元(1450万円)までは
収入と幸福感の間に比例関係が見られますが、
年収がそれ以上になると比例関係が見られなくなる、
という結果が出ているそうです。

日本の家庭でも
「あなた、仕事と家族、どっちが大切なの!」、
「オレはお前たち家族を大切に思うからこそ、
一生懸命仕事をしてるんじゃないか!」という
平行線な会話が何百万回となく繰り返されてきましたが、
中国も豊かになってくるに従って、
おカネと幸せのカンケイについて
真剣に考えなければならない段階に
きているのではないでしょうか。


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2009年5月13日(水)

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