第1052回
中国の「身内」と日本の「ムラ」

「並ばない遺伝子」を持つ中国人と、
「並ぶ遺伝子」を持つ日本人。

しかし、最近思うのは中国の人たちも
「並ぶ遺伝子」を持っているのではないか、
ということです。
中国の人たちは両方の遺伝子を持っていて、
身内には「並ぶ遺伝子」を、
外の世界では「並ばない遺伝子」を働かせる、
という使い分けをしているのではないでしょうか。

中国の人たちの身内に対する態度は、
外の世界の人たちに対する態度と180度違います。
中国の多くの人たちは
日本人とは比べものにならないほど親孝行ですし、
親族が困っていれば自らの全財産を投げ打ってでも助けます。

但し、裏切りは絶対に許されません。
華僑の商売は口約束で決まり契約書さえ作られませんが、
契約書がないのを良いことに約束を反古にしたりすれば、
誰からも相手にされなくなり、
二度とその華僑コミュニティーの中で
商売をすることができなくなる、と言われています。

一方の日本は、昔のムラの概念が
近代化に従ってどんどん希薄になり、
日本全体が一つのムラのような形になりました。
このため、日本では法律を守るのは当然ですが、
それ以外に「列があったら一番後ろに並ぶ」など
「常識」と呼ばれる暗黙のルールがあり、
それを守らない「並ばない遺伝子」を持った人は
「世間が認めない」という社会的制裁を受けます。

日本には「世間様に顔向けできない」という言葉がありますが、
「世間」という概念を中国の人に理解してもらうのは
非常に難しいものがあります。
しかし、日本には「世間」は確かに存在し、
それが日本を「並ぶ遺伝子」を持っている人には
非常に居心地の良い国に、
「並ばない遺伝子」を持っている人には
非常に圧迫感のある国にしているのではないでしょうか。

こう考えていくと、中国の人たちが
「身内」というごく小さな世界で
「並ぶ遺伝子」を働かせるのに対して、
日本人は日本全体という非常に大きな「ムラ」で
「並ぶ遺伝子」を働かせているだけであるのかもしれません。

日本には「旅の恥はかき捨て」という言葉もあります。
海外に行くと日本国内では
絶対にやらないようなことをする
日本人がいることを考えると、
日本人も外の世界に行くと働く
「並ばない遺伝子」を持っているのかもしれません。


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2009年7月8日(水)

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