第1096回
朝、絶対に遅刻しない日本人

先々週、日本を襲った台風18号。
特に、首都圏は平日の出勤時間に台風が接近したこともあり、
電車の運休続出により、
300万人近くの人に影響が出たとのことでした。

私がこのニュースをテレビで見ていて驚いたのは、
電車の運休で足止めをくらった人たちが口々に
「困りました。早く会社に行きたいです」とか、
「お店を開けなければならないので、
早く電車が動いてほしいです」などと話していたことです。
改めて日本人の勤勉さ、生真面目さに感心するとともに、
こうした日本人の特質こそが今後、
日本が世界的な競争の中で
競争力を保っていくための武器になる、と確信しました。

北京には台風は来ませんが、
もし、台風が来て
今回の首都圏と同じように交通がマヒした場合、
「会社に行こう」という努力をする人は
ほとんどいないのではないかと思います。

北京では台風どころか、
ちょっとした雨が降っても遅刻者続出です。

以前は、私は社員に対して
「雨が降ったら道が渋滞するのはわかっているんだから、
いつもより家を早く出なさい」などと、
日本人にとっては常識であることを
いちいち指導していました。
しかし、「バスが来なかったので
没弁法(めいばんふぁー、仕方ない)」とか、
「バスは来たのに満員で乗れなかったので没弁法」などと
毎回「没弁法」で片付けられてしまいましたので、
最近ではもう諦めてしまいました。

しかし、彼らもただただだらしなくて
遅刻するわけではなくて、
彼らには彼らの理屈があるようです。
以前、私は遅刻した社員に
「柳田さんは朝の遅刻に拘りますけど、
朝10分遅刻したら退勤時間を10分遅らせれば
8時間きちんと働いたことになりますから
それで済む話ですよね。
それにもっと言えば、会社に対して
給料に見合う以上の利益を与えられれば、
8時間労働に拘る必要もないですよね」
というようなことを言われたことがあります。

「自分が遅刻したことを棚に上げて屁理屈言うな!」
とどやしつけてやろうとも思ったのですが、
冷静に考えてみると彼が言っていることも
一理あるような気もします。

日本人の「朝、絶対に遅刻しない」という
勤勉さ、生真面目さは世界に誇れる特質です。
しかし、上司やお客さんに対して
「台風が来ても根性で出社しました」とアピールすることは、
仕事の本質とは何の関係もありません。

やはり、私たち日本人も台風が来たら
「没弁法」などと言いながら家でのんびりしていても、
仕事に何の支障も出ないぐらい価値が高く、
売り手市場なビジネスパーソンを目指すべきなのではないか。
今回の台風襲来のニュースを見て、そんなことを思いました。


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2009年10月19日(月)

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