第1180回
中国の地王と日本の土地成金の違い

日本人の中国起業をおススメしている私ですが、
最近、その自信が揺らいでいます。

なぜなら、実際の話、今の中国では
起業して様々なトラブルに見舞われ
七転八倒しながらおカネを稼ぐより、
借金できるだけ借金をして、
なるべく早くマンションを買って、
後は好きに遊んで値上がりを待っていた方が、
ずっとラクにお金儲けができるからです。

中国の不動産価格は昨年の金融危機のときにも、
速度は緩やかにはなったものの上がり続けました。

これにより、昨年も「地王(でぃーわん)」と呼ばれる
土地成金がたくさん誕生しました。
中国富豪の資産を独自に調査しているイギリス人の
胡潤(ふーるん、フーゲワーフ)氏がまとめた
「2010年胡潤財富報告」によれば、
保有資産が1000万元(1億4,000万円)以上の富豪は、
前年比6.1%増の87万5000人になったのですが、
この増加には昨年の不動産価格の上昇が
大きく寄与しているとのことです。

このため、今の中国では
「株は下がることもあるが、不動産は上がり続ける」
というのが常識になりつつあり、
早く買えば買うほど利益が大きくなるので、
「何しろ借金できるだけ借金して、
なるべく早くマンションを買って、地王を目指す」
という人が増えています。

こうしたことから、今北京では、
今は影も形もないですが、これから1年半で建設されて、
2011年末に入居、というような
「期房(ちーふぁん、先物マンション)」までが、
売り出せば即日完売、という状態になっています。

何だか日本のバブル経済期のように
国全体が不動産熱という熱病に浮かされているような、
非常にバブリーで危険な空気が流れています。

しかし、今の中国が日本のバブル経済期と違うところは、
儲けたおカネがフェラーリを買ったり、
ドンペリを開けたりといった消費にはなかなか回らず、
不動産への再投資に一極集中しているところです。
このため、不動産価格がこの1年で
何十%も上がっているのに対し、
消費者物価指数は2%台の上昇に
止まっているのではないかと思います。

輸出、投資主導から消費主導の経済成長に
国内の経済構造を改革したい中国政府としては、
不動産投資に向かっているおカネを、
何とか消費の方に向かわせたいところですが、
「いつ何が起こるかわからないから、
稼いだおカネは使わずに、更なる資産形成に回そう」
と考える地王たちの財布のヒモは、投資には緩いですが、
消費には堅く閉じられてしまうようです。

そう言った点では、日本のバブル経済期の土地成金より、
今の中国の地王の方が、より堅実と言えるのかもしれません。


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2010年5月3日(月)

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