第1181回
中国政府も認める不動産バブル

中国政府も今の中国の不動産マーケットが
バブル状態であることはよく認識しています。

先日、中国国土資源省が発表した
「中国都市地価状況2009年」によれば、
中国で不動産バブルが最も深刻なのは、
北京、上海、深セン、天津、杭州、青島の
6都市である、とのことです。

国土資源省では、
バブルかバブルでないかの判断基準として、
1年間の合計賃貸料を分譲価格で割った
「賃貸価格比率」を採用しています。
この「賃貸価格比率」が4.5%以下だと深刻なバブル、
5.5%以上ならまだまだ値上がりの余地がある、
と判断するそうです。

上記6都市の2009年の「賃貸価格比率」は、
青島が3.37%と最も低く、
それ以外の都市も北京3.82%、上海3.75%など、
軒並み4.5%を下回りました。

この「賃貸価格比率」は言ってみれば、
不動産投資の税引き前利回りですが、
各都市とも不動産価格の上昇に家賃相場の上昇が
まったく追いついていない状況が見て取れます。

国土資源省が北京、上海、深センなどの
大都市を対象に続けている調査でも、
需要と供給の不均衡により、
この5年で住宅販売価格が大きく上昇したのに対して、
住宅賃料は相対的に低下しており、
2008年からはバブルの傾向が現れてきた、
という結果が出ています。

現在、中国の1年ものの定期預金の利率は2.25%です。
元本が保証されている定期預金の利率が2.25%で、
値下がりリスクや空室リスクもある
不動産投資の利回りが3%台ならば、
利回り狙いの人はどう考えても
定期預金の方が安全且つ高利回り、
という判断になるはずです。

しかし、それでも住宅販売価格と
住宅賃料の差がどんどん開いていくのは、
不動産に投資する人が賃料などの
インカムゲインはほとんど考慮しておらず、
「不動産価格は必ず右肩上がりに上がっていく」
という過去の経験からの信念に基づき、
専ら値上がり益のキャピタルゲインを目的に
不動産への投機に走っている、
という背景がありそうです。

実需が伴わないのに
値上がりだけを期待した投機が行われる状態を
バブルと呼ぶならば、
今の中国の不動産マーケットは完全に
バブル状態にあると言えそうです。


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2010年5月5日(水)

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