第1322回
中国民主化のリスク

先々週閉幕した
中国の国会に当たる全国人民代表会議(全人代)。
今年から2015年までの5年間の経済政策
「第12次5カ年計画」が採択されました。

採択された「第12次5カ年計画」の内容は、
一言で言えば
「国民生活を向上させて、国内情勢を安定させる」
という予想通りの内容だったため、
特に目新しいものはないのですが、
この全人代の期間中、私の目を引いたのは
中国のナンバー2、国会議長に当たる
全人代常務委員長を務める呉邦国氏の
「国家の根本的制度など重大な原則では、
中国共産党は絶対にぶれない。
ぶれれば中国を内乱のどん底に陥れてしまう
可能性さえある」という発言でした。

同氏は更に、
欧米式の複数政党制や三権分立などの導入について
「中国の国情を考慮し、我々は導入しない」と断言、
建国前の「血みどろの奮戦」と
文化大革命の「痛ましい教訓」を経て
改革開放路線に至った歴史を振り返り、
「党の指導の堅持」を繰り返し訴えました。

この発言は全人代の前にチュニジアで始まり、
アラブ諸国全域に広がっていった
民主化運動「ジャスミン革命」を模倣した
「中国版ジャスミン革命」の動きを
強く牽制したものであると思われます。
日本の報道では中国共産党は相も変わらず
「民主化運動を弾圧する悪の独裁集団」という
ステレオタイプな描かれ方をしていますが、
私個人的には、呉邦国氏のこの発言は
非常に率直で正直なものであると感じました。

確かに中国共産党の汚職体質にはひどいものがあります。
当社も中国共産党の役人にたかられたことは
1度や2度ではありません。
しかし、それが不愉快だからと言って、
中国を民主化して、国の政治を行う人を
国民が普通選挙で選ぶようにすれば全てが解決するか、
というとそうは思えません。

それよりも
独裁体制から民主主義に移行する際の混乱、
選挙のための近視眼的な政策、
国家としての方向性の喪失など、
民主化を行った際のリスクの方が
はるかに大きいような気がします。
中国の民主活動家の人たちや
「中国版ジャスミン革命」を起こそうとしている人たちは、
万一、本当に中国を民主化できてしまった場合、
その後にどうやってそうした混乱を回避し、
国民を幸せにする政治をしていくのか、
実効性のあるきちんとした計画を持っているのでしょうか。

こう考えていくと、中国を本当に民主化するよりも、
中国共産党の一党独裁を継続させながらも、
網民(わんみん、ネット市民)が
中国共産党の汚職や無茶苦茶な行政を厳しく監視していく、
現在の「ネット民主主義体制」が
最も合理的で現実的な解決方法なのかもしれません。


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2011年3月28日(月)

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